需給動向 海外

◆中 国◆

疾病対応により大きく影響を受ける中国の養鶏産業


2016年の鶏肉生産量は100万トンの減産見込み

米国農務省海外農業局(USDA/FAS)の4月報告によると、2016年の中国の鶏肉生産量は、前年比5.2%減の1270万トンと見込まれる(表4)。国内生産の減少を補うために輸入量は同34.3%増加するが、一方で日本向け鶏肉調製品の輸出不振が継続し、鶏肉全体の輸出量は同6.5%減少するとしている。また、消費量は、疾病の影響で国内生産が制約されることなどから同4.4%の減少が見込まれる。



USDAは鶏肉生産量減少の理由として、2015年1月以降の米国などにおける鳥インフルエンザの発生による種鶏の輸入停止措置の影響を挙げている。

中国は、種鶏の調達を全て輸入に依存しており、2014年まではそのほとんどを米国から導入していた。しかし、鳥インフルエンザの発生国からの生体鶏の輸入停止措置を取ったため、2015年は、米国に替えてフランスを中心とした他の国から調達せざるを得なかった(図14)。同年12月には、フランスでも鳥インフルエンザが発生したため、現在は、ニュージーランド(NZ)とスペインからのみ輸入されている。



種鶏の必要量が確保できない中、ふ卵業者は強制換羽などにより生産性を高める措置を採っているものの、絶対的なひな羽数の不足により生産の減少が予想され、国内鶏肉小売価格上昇の一因となっている(図15)。他方、食品の安全性の強化などの理由で、伝統的なウェットマーケット(生鮮市場)での流通を縮小させたい政府の意向もあり、価格高騰下でも在来鶏の生産増は限定的とみられている。



2016年1〜4月の冷凍鶏肉輸入量は前年同期比9.1%増

2015年に鳥インフルエンザ発生国から鶏肉輸入も禁止され、これに代わってブラジルをはじめとする南米産冷凍鶏肉の輸入が増えた。2016年1〜4月は、前年同期比9.1%増の14万8000トンとなった。中国の輸入鶏肉市場を米国と二分していたブラジルは、米国の減少分を補うばかりでなく、国産鶏肉生産の減少の一部も補う形となり、他の競合国を押さえ着実にシェアを伸ばしている(図16)。



価格下落も日本向け鶏肉調製品の輸出は回復せず

一方、日本向けが中心の鶏肉調製品の輸出については、2014年以降の食品の安全性に関する懸念などから伸び悩んでおり、2015年全体では前年比21%減の17.1万トンにとどまった。2016年1〜4月は、日本向け輸出価格が1トン当たり4200米ドル前後(47万400円:1米ドル=112円)の低水準で推移しているものの、日本向け輸出量は前年同期比5.8%減の4.6万トンとなっている(図17)。



(調査情報部 木田 秀一郎)


				元のページに戻る