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乾燥気候の影響により生乳生産は減少続く
4月の生乳生産量、7カ月連続前年割れ
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2016年4月の生乳生産量は64万9100キロリットル(66万8600トン相当、前年同月比2.7%減)と、7カ月連続で前年同月を下回った(図22)。2015/16年度(7月〜翌6月)の4月までの累計でも824万7300キロリットル(849万4700トン相当、前年同期比1.2%減)と前年同期を下回っている。
同年4月は、豪州全体で概ね平年を下回る降雨量となり、乾草やかんがい用水の価格が上昇した。中でも、豪州の生乳生産量の6〜7割を占めるビクトリア(VIC)州では乾燥の影響が大きく、前年同月比4.7%減と、豪州全体の減少率よりも大きな落ち込みとなった。
今後の気象見通しについて、豪州気象局によると、2016/17年度は、エルニーニョ現象が終息を迎えたことで、VIC州をはじめとする酪農主産地域で、牧草生育期の春先に平年を上回る降雨量が期待できるとしている。
しかし、豪州最大の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社が、2015/16年度生産者支払乳価を期中に1割以上引き下げたことを受け、VIC州の一部と畜場では、乳用牛の週間と畜頭数が前年同期比1.7倍と大幅に増加している。こうした乳用牛の淘汰の動きが、2016/17年度の生乳生産量に影響を与える可能性もあるとみられている。
3月の乳製品輸出量、内需拡大でバター・チーズは減少
DAが公表した2016年3月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなり、全粉乳を除く3品目で減少した(図23)。
・脱脂粉乳 1万6134トン(前年同月比10.4%減)
・全粉乳 7809トン(同33.0%増)
・バター 2205トン(同28.8%減)
・チーズ 1万3040トン(同10.9%減)
主要4品目の中で唯一、前年同月比で増加した全粉乳は、主要な輸出市場である中東において、競合するニュージーランド(NZ)産の輸入が減少したことで増加した。逆に脱脂粉乳は、主要な輸出市場である東南アジア各国において、EU産の輸入が増加したことで減少した。
一方、バターやチーズについては、高い国内需要を受け、輸出向けを国内向けに振り替えたことで、輸出量が減少したとみられており、最近は、豪州国内で高価格帯チーズの消費が増加している。
政府や金融機関、相次いで酪農家支援策を発表
2016年5月に、MG社と豪州フォンテラ社がともに生産者支払乳価を引き下げたことを受け、豪州政府や金融機関は、相次いで酪農家支援策を発表した。
豪州政府は5月25日、ジョイス農相が現地メディアに対し、総額6億豪ドル(492億円:1豪ドル=82円)近い支援策を実施すると表明した。内訳を見ると、5億5500万豪ドル(455億円)は返済条件の緩い融資(注)に、2000万豪ドル(16億円)はVIC州東部ギプスランドのかんがい施設の更新に、また、90万豪ドル(7400万円)は経営支援アドバイザーの増員に、それぞれ充てられるとしている。
VIC州も、州政府や業界団体などからの出資を原資とした、総額1140万豪ドル(9億3500万円)の支援策を発表した。詳細は明らかになっていないが、酪農家のメンタルヘルス対策に約100万豪ドル(8200万円)を投入するとしている。
また、豪州やNZの主要金融機関は、酪農業の長期的な安定性という観点に基づき、借入金の返済や農場の抵当流れ処分の一時停止といった救済措置の実施を発表している。
(注) 実際に与信確認などの融資実務を行うのは州政府で、酪農家は州政府に申請書を提出する。干ばつ時にも同様のスキームで緊急融資が行われている。なお、上限は、100万豪ドル(8200万円)または現在の負債額の半分のうち、いずれか低い方となっている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)
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