需給動向 海外 |
乳価は6年半ぶりに27ユーロ台まで下落
生乳出荷量は12カ月連続前年超え
欧州委員会によると、2016年3月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比5.7%増の1345万トンとなった(図20)。加盟国別に見ると、アイルランドの増加率が同28.6%増(前年同月比13万トン増)と最大で、オランダが同16.8%増(同18万トン増)と増加量が最大となった。
2015年4月の生乳クオータ制度廃止から1年が経過したが、生乳出荷量は増加基調で推移しており、同制度廃止後1年間(2015年4月〜翌3月)の実績は、前年同期比4.2%増(前年同期比622万トン増)となった。生産量を伸ばした国は、順にオランダが同11.9%増(同147万トン増)、ドイツが同3.7%増(同116万トン増)、アイルランドが同18.5%増(同107万トン増)、ポーランドが同5.1%増(同54万トン増)となった。
生乳取引価格は20カ月連続前年割れ
欧州委員会によると、2016年4月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比13.3%安の100キログラム当たり27.27ユーロ(1キログラム当たり33.27円:1ユーロ=122円)となった(図21)。生乳出荷量が増産基調で推移する中、乳製品国際市場における供給のだぶつき感も相まって、同価格は2014年9月以降、前年割れを続けており、生乳出荷量のピークとなる5月を翌月に控え、前月に続き生乳クオータ制度廃止以降の最安値を更新した。同価格が27ユーロ台まで落ち込むのは、価格低迷などでEU酪農危機と言われた2009年10月以来となる。
乳業関係者が一堂に会し、低迷が続くEU酪農情勢について報告
2016年6月2日から3日にかけて欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)の会議がアイルランドで開催された。本会議は、会員である各国の乳業関係者を参集し、現在の需給動向および今後の展望などについて各国の状況を報告するものである。乳価の低迷が長引くなど現在の厳しい情勢の下、酪農関係者が一堂に会することとなり、活発な意見交換などが行われた。
EUの生乳生産は、2016年第1四半期も前年を上回って推移し、世界の主要生乳生産国・地域の中で最も増産傾向にあるが、2016年4月以降は、長引く乳価低迷などを要因とし、全体的には増産ペースは減速気味になっていくと報告された。しかしながら、オランダ、ドイツ、ポーランド、アイルランドなど一部の国では依然として増産基調にあり、ロシアの禁輸措置、不透明な中国需要など需給の緩和要因が引き続きあり、引き締め要因は少ないことから、EU酪農業界の置かれる状況は引き続き厳しいとみられている。
会議出席者へのアンケートでも、2016年のEU生乳生産量の予測を前年比1%超と回答した者が全体の7割を占めた。
欧州委員会からは、EU農産物のプロモーション活動を積極的に実施する予定と報告があり、需給改善を望む多くの関係者の期待を集めた。
(調査情報部 大内田 一弘)
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