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生乳生産量は減少、国際価格も低迷続く見通し
4月の生乳生産量、2カ月連続で減少
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2016年4月の生乳生産量は136万1000トン(前年同月比2.5%減)と、2カ月連続で前年を下回った。うるう年で1日多かった2月と乾乳期の6〜7月を除くすべての月で、前年同月を下回る生産量となり、2015/16年度(6月〜翌5月)の4月までの累計では2073万9000トンと、前年同期比1.8%減となっている(図24)。
ニュージーランド(NZ)最大手乳業メーカーのフォンテラ社によると、乳製品国際価格の下落による乳価の低迷を受け、酪農家が生産意欲を失ったことで、生乳生産量は前年同月比では減少が続いているものの、3月以降は、南島の比較的良好な気候が、生乳生産量を下支えしているとしている。
フォンテラ社が発表した2015/16年度4月までの累計集乳量は、前年同期比3.3%減となった。島別内訳を見ると、北島は、乾燥気候の影響を受け同5.5%減とやや減少した一方、南島は、気候が比較的良好であったことなどを受け、同0.3%増とわずかに増加した。
4月の乳製品輸出量、全粉乳を除き減少
NZ統計局(Statistics NZ)によると、2016年4月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなり、全粉乳を除いて前年同月を下回る結果となった(図25)。
・脱脂粉乳 2万6755トン(前年同月比15.1%減)
・全粉乳 11万4781トン(同24.6%増)
・バター 3万2626トン(同10.9%減)
・チーズ 2万5502トン(同 8.1%減)
品目別に見ると、脱脂粉乳は、中国向けが2割近く減ったことを受け減少した。バターは、中東各国の需要が落ち込んだことで、また、チーズは、日本や豪州など主要な市場は堅調に推移したものの、中東や南米、北アフリカ向けが大幅に落ち込んだことで、それぞれ減少した。一方、全粉乳は、前年4月に輸出量が大幅に減少した反動で増加したとみられるが、乳製品国際価格の低迷の影響もあり、輸出額ベースでは同6.6%増にとどまっている。
乳製品国際価格、回復には時間がかかるとの見方
2016年5月17日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図26)。
・脱脂粉乳 1658米ドル 19万円:1米ドル=112円、前年同期比16.8%安 、前回比1.1%安)
・全粉乳 2252米ドル(25万円、同 5.8%安、同 3.5%高)
・バター 2697米ドル(30万円、同 7.4%安、同 3.7%高)
・チーズ 2693米ドル(30万円、同 1.9%安、同 1.2%安)
いずれの品目も前年同期比では下落が続いているが、全粉乳とバターは、前回よりも上昇している。これは、フォンテラ社が入札量を減らしたことが原因とみられている。このため、現地報道では、今回の入札では取引価格が上昇したものの、国際的には乳製品の供給過剰状態は継続しており、乳製品国際価格の回復には2018年初め頃までかかる可能性があると見る向きもある。
今後の見通しについて、オランダの農業系金融機関のラボバンク社によると、クオータ制度撤廃後のEU地域での増産に伴う乳製品国際需給の不均衡を受け、乳製品国際価格は2016/17年度まで「超下降期」が続き、GDTの全粉乳の取引価格も、現在の価格から上昇したとしても、今後数カ月は2500米ドル(28万円)前後での推移が続くとしている。しかし、同社は、中期的には、国際的な乳製品需要の拡大により、乳製品国際価格は回復に向かうとの見解を併せて示している。
(調査情報部 竹谷 亮佑)
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