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チーズ在庫量は、1984年3月以来の高水準を記録
主要州の1頭当たり平均乳量は、史上最高を記録
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月19日に公表した「Milk Production」によると、2016年4月の生乳生産量は816万5000トン(前年同月比1.2%増)となった。この要因として、飼養頭数の増加に加え、1頭当たり乳量の増加が挙げられる。
同月の乳用経産牛の飼養頭数は933万1000頭(同0.2%増)と前年同月をわずかに上回り、2008年12月以来、最大となった。この背景には、飼料穀物価格が安値安定で推移する中で、生産者が乳価の低迷に伴い低下する収入を維持するため、経産牛の更新を遅らせ、生乳生産量の確保に動いていることが挙げられる。このため、2016年4月の乳用経産牛と畜頭数は、前年同月比6.5%減の22万7000頭となった。
また、同月の全米の1頭当たり平均乳量は、生乳生産に適した冷涼な気候が比較的長く続いたことから、875キログラム(同1.0%増)とわずかに増加した。特に、主要23州は同884キログラム(同1.0%増)と、2003年に同統計が公表されてからの最高値を記録した(図18)。
なお、USDAは2016年の生乳生産量を9634万3000トン(前年比1.8%増)と、前月予測から27万2200トン上方修正した。また、2017年については、9761万3000トン(同1.3%増)と予測し、引き続き堅調に推移すると見込んでいる。
乳価は17カ月連続で下落
USDA/NASSが5月31日に公表した「Agricultural Prices」によると、2016年4月の全米平均乳価は、堅調に推移する生乳生産量と乳製品輸出の不振を受けて前年同月比9.1%安の100ポンド当たり15.0米ドル(1キログラム当たり37円:1米ドル=112円)となり、2014年12月以降連続で下落した。
チーズ価格は前年同月を大幅に下回る
USDA/NASSが6月2日に公表した「Dairy Products」によると、チーズの生産量は、堅調な生乳生産量や増加傾向で推移する国内消費量などを受けて2013年4月以降、前年同月を上回り、2016年4月は44万9800トン(前年同月比1.4%増)となった。
一方、米国農務省経済調査局(USDA/ERS)および海外農業局(USDA/FAS)が公表した貿易データによると、2016年3月のチーズの輸出量は前年同月を25.7%下回る2万5500トン、輸入量は前年同月を25.6%上回る1万5300トンとなった。この要因として、主要通貨に対し米ドル高で推移する為替相場が挙げられ、2014年秋口以降、輸出量は減少傾向で推移する一方、輸入量は増加傾向で推移する傾向が続いている。
こうしたことから、2016年4月末時点のチーズの在庫量は55万200トン(前年同月比11.7%増)となり、4月末時点としては1917年の統計開始以来の最多を記録し、また通算でみても1984年3月以来の最多となった(図19)。米国政府による乳製品買い入れ制度は2014年農業法が成立した際に廃止され、現在積み増されている在庫は全て民間在庫であることから、この高い在庫水準は、米国におけるチーズ市場が民間主導で拡大していることを反映しているとみられている。
また、同年5月のチーズの価格は、高水準で推移する在庫量を受けて、前年同月比15.4%安の1ポンド当たり162.4米セント(1キログラム当たり401円)となり、18カ月連続で前年同月を下回った。
(調査情報部 野田 圭介)
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