需給動向 海外 |
生産量は前年並み、豚価は依然として低迷続く
EU最大のドイツが7.6%減、スペインの増産も鈍化
欧州委員会によると、2016年3月の豚枝肉生産量(EU28カ国)は、前年同月比1.1%減の202万トンとなった(図9)。
加盟国別に見ると、EU最大の生産国であるドイツが同7.6%減の46万トンとかなりの程度減少し、これまでEUの増産をけん引してきた第2位のスペインも同2.3%増と増加幅が縮小した。この2カ国でEU全体の豚肉生産量の4割を占めるが、その他の主要生産国にも大きな増産の動きは見られていない。
豚枝肉卸売価格は31カ月連続前年割れ
欧州委員会によると、2016年4月の豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、前年同月比11.4%安の100キログラム当たり127.57ユーロ(1万5564円:1ユーロ=122円)と31カ月連続で前年同月を下回った(図10)。
2016年に入り、主要豚肉生産国では減産もしくは微増となったことで、EU全体の増産幅は縮小傾向にあるが、価格は依然として低調に推移している。同年1月に実施された民間在庫補助(PSA)で市場隔離された9万トン強(製品重量ベース)の豚肉が、同年4〜6月にかけて市場放出されており、これも価格低迷の要因となっている。
欧州委員会は、3月に開催された農業理事会において、かねてより業界団体などから要請の強かったPSAの再実施について、特別追加支援措置の一つとして実施を表明したが、時期や枠組みなど詳細についてはまだ明らかにしていない。
中国への輸出が拡大
このような中、EUから中国への豚肉輸出量が増加している。2016年1〜3月の輸出量は、前年同期比134.1%増の21万トンとなった。
加盟国別では、中国の最大豚肉輸入先国であるドイツが同81.9%増の5万5795トン、同2位のスペインが同132.5%増の5万5611トンとなり、両国で中国の全豚肉輸入量の約4割を占めた。そのほかでは、デンマーク、フランスが同2倍以上となり、オランダが最大の増加率となる同4倍となった。また、アイルランド、英国なども大幅に増やしている。中国では、供給不足により国内の豚肉小売価格が高騰しており、EUのほか米国、カナダ、ブラジルからの輸入量も増加している。
オランダの農協系金融機関であるラボバンクによると、中国の豚肉供給不足はしばらく続くことから、2016年のEUから中国を含む域外への豚肉輸出量は前年比50%増の200万トンに達する見込みであるとした。また、これにより、低迷が長引くEUの豚肉市場価格の回復が期待できるとしている。
EU市場は、PSAにより市場隔離した豚肉が4〜6月に市場放出されていることなどから需給バランスは緩む状況下にあるが、関係者は輸出拡大による需給改善に大きな期待を寄せている。
(調査情報部 大内田 一弘)
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