需給動向 海外

◆豪 州◆

牛肉生産量、減少傾向が継続


2月の牛肉生産量、かなり大きく減少

豪州統計局(ABS)によると、2016年2月の牛肉生産量は、18万7583トン(前年同月比13.5%減)と8カ月連続で前年同月を下回った(図6)。牛群再構築の進展に加え、最近の気象条件の改善から肥育牛の肥育期間の延長により、保留傾向が高まっていることが背景にある。牛肉生産量の多いクイーンズランド州(生産量全体の約5割)、ニューサウスウェールズ州(約2割)、ビクトリア州(約2割)は、いずれも前年同月比で10%以上の高い減少率となっている。その一方、牛群再構築に伴う雌牛のと畜割合の減少と、輸出を中心とした堅調なグレインフェッド牛肉需要に伴う穀物肥育牛のと畜割合の増加から、平均枝肉重量は増加傾向にあり、と畜頭数の減少による牛肉生産量の減少を一定程度緩和している。



豪州農業資源経済科学局(ABARES)によると、牛群再構築には一定の期間を要するため、牛肉生産量が増加基調となるのは2017〜18年ごろと見込まれている。

日本向け牛肉輸出量も減少傾向

MLA(豪州食肉家畜生産者事業団)によると、2016年3月の日本向け牛肉輸出量は、グラスフェッド牛肉が1万2133トン(前年同月比14.4%減)と11カ月連続で、グレインフェッド牛肉が1万1826トン(同14.9%減)と8カ月連続でいずれも前年同月を下回った(図7)。豪州の牛肉生産量の減少や日本市場で競合する米国の牛肉生産量の増加により、今後の日本向け輸出量は減少傾向で推移するとみられている。



肉牛取引価格、わずかに下落傾向

MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年4月末日時点で1キログラム当たり546豪セント(464円:1豪ドル=85円)となった(図8)。2015年11月以降、干ばつに伴う飼養頭数の減少とその後の牛群再構築を反映して、600豪セント前後の記録的な高水準が続いたものの、3月以降は下落傾向となっている。年初から為替相場が豪ドル高傾向で推移していることと、米国の牛肉生産拡大などによる収益の悪化を見込んで、買い付け意欲が弱まったことで、これまで高水準で推移してきた相場が落ち着き始めたとみられている。



MLA、生体牛取引価格の二極化を懸念

MLAは2016年4月、四半期に一度の牛肉需給見通しを公表した。

これによると、2020年までの見通しについては、牛飼養頭数、と畜頭数、牛肉生産量、輸出量のすべての項目で前回の予測値を据え置いており、引き続き2017年ごろまでは、いずれも減少傾向で推移するとしている。

また、直近の懸念材料として、国内における肥育牛(と畜向けの生体牛)の取引価格の下落と若齢牛(肥育向け生体牛)の取引価格の上昇を挙げている。豪ドル高で推移する為替レート、米国の生産増加に伴う輸出需要の減少、ブラジルなどの生産量の増加に伴う国際的な供給量の増加を要因として、主にと畜向けの500〜600キログラムの生体牛取引価格は今後下落するとしている。一方で、主に肥育もと牛となる若齢牛の取引価格については、牛の飼養頭数の減少に伴い、フィードロット経営や牧草肥育経営など肥育業者間の競合が高まることで、価格の上昇が見込まれるとしている。このため、MLAは肥育牛の取引価格と、若齢牛の取引価格の差が縮まることで、肥育業者の利益が減少することを懸念している(図9)。



(調査情報部 大塚 健太郎)


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