需給動向 海外 |
乳製品輸出減少、国際価格は不安定な推移続く |
2月の乳製品輸出量、粉乳中心に大幅減
デーリー・オーストラリア(DA)が公表した2016年2月の主な乳製品の輸出量は、以下の通り、チーズを除いて前年同月比減となり、中でも粉乳類は大幅減となった(図29)。
・脱脂粉乳 1万4621トン
(前年同月比 32.5%減)
・全粉乳 4820トン(同32.6%減)
・バター 2827トン(同10.4%減)
・チーズ 1万4859トン(同16.7%増)
粉乳類の大幅減は、脱脂粉乳と全粉乳の中国向け輸出が増加したものの、最大の輸出先である東南アジア市場で、より安価なニュージーランド産への切り替えが進んだことが大きい。
バターは、主要な輸出先であるアジアや中東、アフリカ市場で、より安価なEU産への切り替えが進んだことで同じく減少したものの、米国向けが大幅に増加したことで、比較的小幅な減少にとどまっている。一方、チーズは、中国や米国の堅調な需要を受けて増加した。
なお、2015年後半にかけて猛威を振るったエルニーニョ現象による乾燥気候が、牧草生育に影響を及ぼしたことから、主産地のビクトリア州を中心に、生乳生産量は引き続き前年を下回って推移している。生乳生産は、既に年間生産のピークを過ぎ、乾乳期に入りつつあるが、現地報道によると、乾燥気候に伴いかんがい用水の取得費用が上昇していることもあり、乳牛のと畜頭数は、今後も高水準で推移するとしている。こうした状況に対し、DAは4月28日に声明を発表し、生産者への経営上のアドバイスや技術的サポートといった支援プログラムを拡充するなどして、対応に当たりたいとしている。
乳製品国際価格、全粉乳中心に増加も不安定な推移続く見通し
2016年4月19日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(図30)。
・脱脂粉乳 1727米ドル
(19万円:1米ドル=111円、
前年同期比23.4%安 、前回比0.4%高 )
・全粉乳 2156米ドル
(24万円、同 11.8%安 、同7.2%高 )
・バター 2746米ドル
(30万円、同 9.2%安、同1.6%高 )
・チーズ 2636米ドル
(29万円、同 8.7%安、同5.1%安 )
脱脂粉乳、全粉乳およびバターは、前回(4月5日開催)から上昇したが、中でも全粉乳は比較的上昇幅が大きかった。これは、今回のGDTの直前に開かれた先物取引市場で、全粉乳価格が上昇したことを受けたものとみられる。
今後の見通しについては、為替相場の動向によっては上昇幅が縮小するとの見方もある。また、これから生産ピークを迎えるEUや米国の生乳生産動向によっては、不安定な推移が続くとみられている。
ラボバンク、短期見通しを公表
オランダの農業系金融機関であるラボバンク社は4月6日、2016年および2017年の酪農乳業界の短期見通しを発表した。これによると、原油安に伴う産油国の経済停滞や米ドル高で推移する為替相場、また、EUの生産過剰により、乳製品需給に不均衡が生じており、当面はこの状態が続くとしている。
豪州については、乳製品国際価格に比して生産者支払乳価が高めに設定されているものの、乾燥気候に伴う生乳生産コストの増加を受け、酪農家の収益性は低下するとみている。
今後の見通しについては、中国で、2016年後半にかけて乳製品需要の回復により余剰在庫が解消に向かうことに加え、アジア各国において乳製品需要が堅調に推移するとみられることから、低い水準で推移している乳製品国際価格が、2017年には上昇に転じるとしている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)
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