畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 2016年の需給見通し、牛肉生産・輸出ともに減少− 2016年3月
需給動向 海外

◆豪 州◆

2016年の需給見通し、牛肉生産・輸出ともに減少


牛肉生産量、5カ月連続で減少

 豪州統計局(ABS)によると、2015年11月の牛肉生産量は、20万4241トン(前年同月比9.9%減)と、干ばつ後の牛群再構築に伴い5カ月連続で前年同月を下回った(図3)。また、過去5カ年の同月平均と比べて32カ月ぶりに減少に転じており、減少傾向が顕著となっている。

 主要生産州別に見ると、最大の生産州であるクイーンズランド州は、前年同月比9.3%減である一方、ニューサウスウェールズ州は同10.3%減、ビクトリア州は同15.7%減と、北部から南部の州へ向かうにつれて、減少率が大きくなっている。これは、高温乾燥気候となる傾向が強い北部に比べ、温暖湿潤な気候である南部では、より牛群の保留傾向が高まっているためとみられている。

牛肉輸出量、米国・日本向けを中心に減少

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2016年1月の牛肉輸出量は5万8304トン(前年同月比13.7%減)と、牛肉生産量の減少に伴い、6カ月連続で前年同月を下回った(表2)。

 主な輸出先国別に見ると、米国向けは、米国内の牛肉生産回復から5カ月連続で前年同月を下回っている。日本向けも、高水準の国内在庫や、豪州産牛肉をめぐる韓国、中国との買い付け競争から、9カ月連続で前年同月を下回っている。一方、韓国向けは、減少傾向にある日本向けからのシフトや、韓国・豪州自由貿易協定(FTA)における3度目の関税削減が2016年初めに行われたことから、5カ月連続で前年同月を上回っている。また、中国向けも、減少傾向にある米国、日本向けからのシフトや、中国・豪州FTAにおける2度目の関税削減が2016年初めに行われたことから、9カ月連続で前年同月を上回っている。

 なお、その他の市場では、インドネシアからの需要を中心とした東南アジア向けと、グレインフェッド牛肉への需要が強いEU向けが前年同月を上回っている一方、原油価格の下落の影響などから、中東向けは前年同月を下回っている。

肉牛取引価格、過去最高を記録

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年1月末日時点で1キログラム当たり586豪セント(516円:1豪ドル=88円)となった(図4)。2015年10月下旬以降、記録的な高水準を維持しており、2016年1月中旬には、同600豪セントを超える過去最高値を記録している。これは、2015年末に多くの地域で一定の降雨があったことで、肥育もと牛生産者が保留傾向を強め、取引頭数が減少したためとみられている。今後の価格推移も、天候による影響が大きいものの、過去3年に及ぶ干ばつの影響から、取引頭数は低水準での推移が予想され、引き続き高水準で推移するとみられている。

需給見通し、2017年まで生産・輸出ともに減少

 MLAは2016年1月、四半期に一度の牛肉需給見通しを公表した(表3)。

 これによると、2015年前半までのと畜頭数および生体牛輸出の増加とその後の牛群再構築を反映し、下表の全ての項目で、2017年まで前年を下回り、2018年以降、回復するとしている。ただし、平均枝肉重量は、雌牛と畜割合の低下や穀物肥育牛の割合の上昇から、増加傾向での推移を見込んでいる。

 2016年の主要輸出先国(米国、日本、韓国、中国)向け輸出量も、輸出量全体の減少を反映して、前年を下回ると見込んでいる。国別の動向を見ると、米国向けは、米国内の牛肉生産の回復や豚肉・鶏肉への消費のシフトが影響する一方、健康志向の高まりから、グラスフェッド牛肉の輸出拡大が期待できるとしている。日本向けは、米国産との競合や、豪州産牛肉をめぐる韓国・中国との買い付け競争は高まるものの、グレインフェッド牛肉を中心に安定的な輸出量が維持されるとしている。韓国向けは、米国産と競合する一方、韓国内生産の減少や豪州産牛肉の安全性への高い評価は有利に作用するとしている。中国向けは、南米諸国との競合や、経済成長鈍化の影響が懸念される一方、都市部の高・中所得者層や、外食産業からの需要は引き続き強いとして、期待を示している。

(調査情報部 根本 悠)


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