需給動向 海外

◆米国◆

生乳生産量は前年を上回って推移


カリフォルニア州では減産も全米では増産

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が1月22日に公表した「Milk Production」によると、2015年12月の生乳生産量は、飼料穀物価格安を背景とする飼料の多給や遺伝的改良などにより、前年同月比0.7%増の791万3800トンとなり、24カ月連続で前年を上回った(図13)。また、2015年通年では9457万1000トン(前年比1.2%増)と、6年連続で前年を上回った。同月の生産量を州別に見ると、最大の生産州であるカリフォルニア州は、同州で発生している干ばつによる1頭当たり乳量の減少により、同3.0%減の152万6800トンと、前年を下回った。一方、全米2位の生産量を誇るウィスコンシン州は、好天に恵まれ草地の状態が良好なことで同4.8%増の112万3500トンとなり、国内の増産を支えている。

 また、2016年の生産量についてUSDAは、乳価低迷により乳牛の淘汰が進み、飼養頭数は減少するものの、引き続き1頭当たり乳量が前年を上回るとの見込みから、前年比1.6%増の9600万トンを見込んでいる。

乳価は安値で推移

 USDA/NASSが1月29日に公表した「Agricultural Prices」によると、全国平均乳価は前年同月比15.7%安の100ポンド当たり17.2米ドル(1キログラム当たり46円:1米ドル=122円)となり、生産量の増加などにより、2014年12月以降前年同月を下回って推移している(図14)。また、2015年平均では同17.08米ドル(同46円)と前年を28.7%下回った。

 2016年の全国平均乳価についてUSDAは、チーズや脱脂粉乳の輸出減などでこれらの用途向け乳価が下落するとの見込みから、同15.35〜16.15米ドル(同41〜43円)と、さらなる下落を見込んでいる。

バター在庫量は大幅増加

 USDA/NASSが2月3日に公表した「Dairy Products」によると、2015年12月のバターの生産量は、前年同月比4.3%増の8万トンとなった。また、2015年通年では83万8700トン(前年比0.4%減)となった。

 同月の生産量を地域ごとに見ると、最大のバター生産州であるカリフォルニア州が同0.1%増にとどまる中、同州を含む西部地域(注1)は同11.7%増となったことから、高値で推移するバター価格などを背景に、生乳生産が減少するカリフォルニア州以外の州での生産が増加したものとみられる。

 また、USDA/NASSが1月22日に公表した「Cold Storage」によると、2015年12月末の冷凍バターの在庫量は、生産量の増加などにより、前年同月比46.0%増の6万9300トンと2012年以来の高水準となっている(図15)。

 一方、米国農務省農業販売促進局(USDA/AMS)によると、2015年12月のバター価格(注2)は、国内需要の拡大により、前年同月比32.2%高の1ポンド当たり233.2セント(1キログラム当たり627円)と3カ月連続で前年を上回った。2015年平均では同208.9セント(同562円、前年比3.5%安)となった。USDAは、2016年も堅調な国内需要が続くと見ており、同価格も高水準での推移が見込まれる。

(注1)USDAの報告書による区分。カリフォルニア、ワシントン、オレゴン、アイダホ、コロラド、ニューメキシコ、モンタナ、ワイオミング、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ハワイ、アラスカの13州。

(注2)シカゴマーカンタイル取引所(CME)の現物価格(グレードAA)。

(調査情報部 渡邊 陽介)

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