需給動向 海外 |
2015年の豚肉輸出量は過去最高を記録
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枝肉重量の増加が後押し チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2015年の豚と畜頭数は、前年比0.1%増の512万4407頭となった。また、同年の豚肉生産量(枝肉重量ベース)は、同0.8%増の52万4172トンとなった(図8)。 同国では、近年、養豚経営を取り巻く環境規制強化の流れの中で生産能力が停滞傾向で推移している。しかしながら、2015年は、トウモロコシなど飼料原料価格が安価に推移したことで飼料の多給が可能となり、1頭当たり枝肉重量は同0.6%増の102.3キログラム(注1)と過去最高を記録した。 (注1)チリの豚枝肉の多くは頭・皮付きであるため、1頭当たり枝肉重量は日本の1.3倍程度が目安。出荷体重の平均は120キログラム前後。 低調な国内価格で輸出仕向けが増加 2015年の冷蔵および冷凍豚肉輸出量は、前年比9.8%増の13万3727トン(製品重量ベース)と過去最高を記録した(表5)。背景には、生産量が微増となったことに加え、国内の豚肉価格が低調に推移する中、収益性に優れる輸出仕向けが増加したことが挙げられる。 最大の輸出先となった韓国向けは、前年比30.7%増と大幅に増加した。要因として、両国間で2004年に発効された自由貿易協定(FTA)により関税が10年かけて段階的に撤廃されたことに加え、韓国内での豚肉価格高騰により輸入豚肉の需要が大幅に増加したことが挙げられる。また、中国やロシア向けは、チリ産がラクトパミン(注2)を使用していないことから引き続き好調である。中国は、需要量に対して国内生産量が大幅に不足していることから豚肉の輸入量を大幅に増やしているほか、ロシアは欧米に対する禁輸措置の影響で、チリ産への需要が増加している。一方、日本向けは、最大の輸出先であったロシア市場を失ったEU産(主にスペイン産)が日本市場に流入した結果、同11.6%減とかなり大きく減少した。 チリ豚肉生産者協会(ASPROCER)によると、同国では安い輸入豚肉価格に国産豚肉価格がひっぱられる傾向がある。2015年の冷蔵および冷凍豚肉輸入量は同1.8%増の3万4322トン(製品重量ベース)と、2013年に次ぐ高い水準となった(表6)。これにより、国内価格が低迷したことから、2015年の豚肉生産量のうち例年より多い約55%(冷蔵・冷凍豚肉や加熱豚肉製品)が収益性に勝る輸出に仕向けられた。近年、同国では人口増と経済成長を受けて拡大する国内需要分を確保すべく、安価な外国産豚肉の輸入量を増やして、加工品を製造する傾向が見られている。 (注2)豚や牛の体重増加や飼養効率の改善、赤身肉割合の向上に用いられる。 ペソ安を背景に堅調な輸出を見込む 大手豚肉輸出企業4社からなるチリポークによると、2016年の国際相場は、欧州産が引き続き多く出回り米国産も増産が見込まれるため、下落基調が続くと見込まれている。こうした中、チリ産豚肉は、ドル高ペソ安で推移する為替相場を材料に、価格競争力を発揮しながら、中国などの旺盛な需要を取り込んでいきたいとしている。 (調査情報部 米元 健太)
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