需給動向 海外

◆米 国◆

飼養頭数、年間豚肉生産量ともに過去最高を記録


飼養頭数は過去最高も、価格下落を背景に分娩母豚頭数は減少

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2015年12月23日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、12月1日現在の豚飼養頭数は、前年比0.8%増の6829万9000頭と過去最高を記録した(表4)。項目別に見ると、繁殖豚は600万2000頭(同1.1%増)、肥育豚は6229万7000頭(同0.7%増)と、それぞれ前年をわずかに上回った。

 さらに、肥育豚頭数を重量カテゴリ別に見ると、120〜179ポンド(同1.6%増)および180ポンド以上(同5.4%増)がいずれも前年を上回り、総飼養頭数の増加をけん引した。一方、50ポンド未満(同1.5%減)および50〜119ポンド(同0.5%減)の比較的軽量(若齢)なカテゴリは前年を下回った。これは、供給増による肥育豚価格の下落を背景に、2015年9〜11月の分娩母豚頭数が、前年同期を4.0%下回ったことが要因とみられている。なお、同期の1腹当たりの産子数は、前年同期比2.9%増の10.53頭と過去最高となった。

生産量は史上最多水準も、今後の増加幅は縮小見込み

 USDA/NASSが1月21日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2015年12月の豚と畜頭数は103万6000頭(前年同月比5.2%増)となり、同年2月以降11カ月連続で前年を上回った。この要因として、トウモロコシなどの豊作により安価で推移する飼料穀物価格を背景とした生産コスト低下により、生産者の増頭意欲が高まったことが挙げられる。

 と畜頭数の増加に伴い、同月の豚肉生産量は前年同月比4.4%増の100万1100トンと38カ月ぶりに100万トン台に達し、過去最高を記録した2012年10月に次ぐ水準となった。この結果、2015年の年間豚肉生産量は1111万3000トン(前年比7.2%増)と、過去最高を記録した。

 一方、豚肉生産量の増加に伴い低調に推移する肥育豚価格を受け、分娩母豚頭数が減少し、若齢の肥育豚頭数も減少傾向で推移していることから、今後のと畜余力は低下するとみられており、USDAは2016年の豚肉生産量を1132万2000トン(前年比1.9%増)と、増加幅が縮小すると見込んでいる(図5)。

肥育豚価格は依然低迷

 USDA/NASSが1月22日に公表した「Cold Storage」によると、2015年12月末日時点の冷凍豚肉の在庫量は、前年同月比8.3%増の24万7500トンと前年同月をかなりの程度上回った(図6)。

 一方、供給過剰による豚肉在庫の積み増しにより、肥育豚価格および豚肉卸売価格は下落傾向で推移している。米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2016年1月の肥育豚価格(速報値)は、前年同月比26.9%安の100ポンド当たり39.5米ドル(1キログラム当たり106.2円:1米ドル=122円、図7)、同月の豚肉卸売価格(カットアウトバリュー(注)、速報値)は、前年同月比13.5%安の100ポンド当たり72米ドル(1キログラム当たり193.7円)と、いずれも2015年1月以降、13カ月連続で前年同月を下回った。

(注)各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格。

 なお、肥育豚価格は2015年12月以降、2カ月連続で100ポンド当たり40米ドルを下回る水準で推移しており、これは、世界的な景気の後退や新型インフルエンザなどによる国内外の需要減退を受けて価格が低迷した2009年以来、約6年ぶりのこととなる。

生体豚の輸入は今後増加の見込み

 USDA/ERSによると、2015年11月の豚肉輸出量は、19万6000トンとなり前年同月を18.5%上回った。輸出先国別に見ると、最大の輸出先であるメキシコ向けが6万2000トン(前年同月比25.7%増)、日本向けが4万4000トン(同15.4%増)となった。

 一方、同月の生体豚輸入頭数は、47万2000頭(前年同月比24.9%増)と前年同月を大幅に上回った。米国の生体豚輸入は、ほぼ全てをカナダに依存しているが、カナダドルに対し米ドル高で推移する為替相場に加え、2015年12月18日に牛肉および豚肉が米国の義務的原産地表示制度(COOL)の対象から除外されたことから、今後、カナダ産生体豚への引き合いはより一層強まるとみられている。USDAは、2016年の生体豚輸入頭数を前年比9%増の620万頭と見込んでいる。

(調査情報部 野田 圭介)

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