調査・報告  畜産の情報 2016年3月号

平成26年度はっ酵乳・乳飲料等の
生産実態調査の結果

畜産需給部 乳製品課


【要約】

 近年のはっ酵乳、乳飲料および加工乳の消費は、年度によってさまざまな変化をみせており、普通牛乳の消費にも大きな影響を与えている。

 当機構では、これら乳製品の消費動向を的確に把握するため、毎年度、乳業メーカーなどを対象に「はっ酵乳・乳飲料等の生産実態調査」を実施している。

 平成26年度の調査では、はっ酵乳の生産量については、全体では前年度を下回ったものの、ドリンクタイプについては好調な伸びが見られた。また、乳飲料および加工乳の生産量については、原料となる脱脂粉乳などの価格上昇や夏場の天候の影響により、いずれも前年度を下回る結果となった。

1 調査概要

(1)調査対象

 本調査は、「はっ酵乳(注1)」「乳飲料(注2)」「加工乳(注3)」の3つの品目ごとに生産量、成分、原材料使用割合などを調査したものである。

 調査対象は対象品目を生産している全国126企業(乳業者と非乳業者を対象。廃業などにより生産を中止した6企業を含む。)であり、有効回収は103企業、有効回収率は81.7%(103/126)であった(表1)。

 なお、本調査結果による過去5年間の生産量などのデータは、各年度の回収率や、規模の大きな企業の回答の有無に影響されることに留意が必要である。

(注1) はっ酵乳:生乳および乳製品を原料として、これを乳酸菌または酵母ではっ酵させ、のり状または液状にしたもの。

(注2) 乳飲料:生乳、牛乳、特別牛乳およびこれらを原料として製造した乳製品を主要原料とした飲料で、乳や乳製品以外のもの
   (ビタミン、カルシウム、果汁、コーヒーなど)を加えたもの。なお、本調査では、風味にかかわらず、色のついているものを
   「色物乳飲料」、白いものを「白物乳飲料」に分類した。
   白物乳飲料:「乳飲料」のうち、乳成分にカルシウムやビタミン、レシチンなどを加えたもの。
   色物乳飲料:「乳飲料」のうち、乳成分に果汁、コーヒーなどを加えたもの。

(注3) 加工乳:生乳やバター、クリーム、脱脂粉乳などの乳製品を原料として、それらを加工したもの。

(2)全国生産量のカバー率

 本調査の全国生産量に対するカバー率は、はっ酵乳が85.7%、乳飲料が76.8%、加工乳が48.6%となった(表2)。

2 26年度調査結果の特徴的な点

 今回の調査などにおいて見られた特徴的な点は以下の通りである。

(1)「ドリンクタイプ」はっ酵乳の生産増加

 はっ酵乳の生産量は、平成26年度においては前年を下回る結果となったが、これまでにも高い伸びが見られ、乳業メーカーでは、はっ酵乳は消費者の健康志向の高まりに合致した機能性商品として今後も拡大が期待される市場と見ている。このような中、特に「ドリンクタイプ」の生産量は伸びており、誰でも手軽に口にすることができる点や幅広い商品のラインナップにより、選択肢が増えていることも影響しているものとみられる。また、はっ酵乳の原材料使用割合は、消費者がより生乳に近い風味を好む傾向にあることに加えて、脱脂粉乳の原料供給がタイトなことや価格上昇を背景に、さらに一層、脱脂粉乳から脱脂濃縮乳への置き換えが進んでいる。

(2)乳飲料の生産減少

 乳飲料のうち色物乳飲料の生産量は、コンビニエンスストアなどで販売されているカップ型のコーヒータイプの消費の伸びにより、平成25年度まで堅調に推移していたものの、26年度は前年度を下回った。また、白物乳飲料の生産量についても、これまで機能性飲料を中心として増加傾向で推移してきたものの、26年度は減少に転じた。乳飲料の減少の要因としては、色物および白物とも消費税の増税や脱脂粉乳などの原料価格の上昇に伴う値上げや、夏場の天候不良による需要の減少が挙げられる。

 また、白物乳飲料の原材料使用割合についても、はっ酵乳と同様に脱脂粉乳が減少した一方、脱脂濃縮乳が増加している。

(3)「低脂肪」を中心とした加工乳の生産減少

 加工乳の生産量は、23年度以降、原料となる乳製品の価格が上昇したことや大手3社を中心とした乳業メーカーが機能性での価値訴求を行いやすい白物乳飲料の生産にシフトしたことから、26年度に至るまで減少傾向で推移している。特に「低脂肪」については加工乳の原料として生産コストの低減に寄与してきたバターや脱脂粉乳の価格が上昇したことから減少が目立っている。乳業メーカーは加工乳市場を今後も縮小傾向であると見ており、より価格優位性の高い成分調整牛乳や商品価値の高い乳飲料へ生産をシフトしていくものと考えられる。また、加工乳の原材料使用割合は、はっ酵乳や白物乳飲料と同様に脱脂粉乳から脱脂濃縮乳への置き換えが進む結果となった。

3 生産動向

(1)はっ酵乳

 回答のあった企業の平成26年度はっ酵乳の生産量は103万4674キロリットル(前年度比9.3%減)となった(図1)。減少の理由は、他社商品との競争激化、取引先の減少や販路の縮小などであった。商品タイプ別(注4)に見ると、「ソフトタイプ」が減少し、「ドリンクタイプ」が増加する結果となった。

(注4) はっ酵乳の商品タイプを次の通り分類した。
    (1)プレーン:牛乳・乳製品などをはっ酵させたもの
    (2)ハード:寒天やゼラチンなどで固形化したもの
    (3)ソフト:果肉などを加えた流動性のあるもの
    (4)ドリンク:プレーンヨーグルトを液状化したもの
    (5)フローズン等:上記以外のもの


 全体の生産量が減少する中で、乳業・非乳業の割合を見ると、乳業系は約8割、非乳業系は約2割となっており、前年度並みとなった(図2)。一方、生産量は乳業系が81万4226キロリットル(同9.9%減)、非乳業系が22万448キロリットル(同7.2%減)となっており、ともに減少となった。


(2)乳飲料

ア 色物乳飲料

 回答のあった企業の平成26年度の色物乳飲料生産量は49万8835キロリットル(前年度比27.8%減)となり、大きく減少した(図3)。減少の要因としては、他社商品との競争激化、値上げによる売り上げ減、夏場の天候不良による需要の減少などが挙げられる。

 なお、乳業類型別に見ると、大手3社が30万9379キロリットル(同23.4%減)、農プラ系が5万8994キロリットル(同6.3%減)、中小系が13万462キロリットル(同41.8%減)となり、大手3社と中小系の減少が目立つ結果となった。


イ 白物乳飲料

 回答のあった企業の平成26年度の白物乳飲料生産量は51万7096キロリットル(同4.3%減)となった(図4)。25年度まで増加傾向にあったが、26年度の生産量はわずかに減少した。減少要因として、原料となる脱脂粉乳やホエイなどの価格高騰により、牛乳との価格優位性が縮小したことや夏場の天候不良による需要の減少などが挙げられる。乳業類型別に見ると、大手3社が28万4237キロリットル(同4.7%減)、農プラ系が6万458キロリットル(同11.1%減)、中小系が17万2402キロリットル(同1.0%減)となっており、いずれも減少した。また、構成比は大手3社が約6割、農プラ系が約1割、中小系が約3割と前年度並みとなっている。

(3)加工乳

 回答のあった企業の平成26年度の加工乳生産量は5万7255キロリットル(前年度比9.4%減)となった(図5)。加工乳の生産量は、23年度以降、減少傾向で推移している。商品タイプ(注5)別に見ると、「低脂肪」が1万8463キロリットル(同36.6%減)の減少が目立つ。減少要因としては、乳価上昇に伴う販売価格の引き上げによる需要の減少や加工乳の原料となる国産および輸入産脱脂粉乳の価格が上昇したことなどが挙げられる。乳業メーカーにとっては、堅調な需要のある牛乳や成分調整牛乳と比べて風味などで特徴を打ち出しづらい加工乳については、新商品の開発に対するインセンティブが上がらないという面もある。

(注5) 加工乳の商品タイプを乳脂肪率により次の通り分類した。
     (1)低脂肪:1.5%以下
     (2)普通脂肪:1.5%〜3.8%未満
     (3)濃厚:3.8%以上


 乳業類型別に見ると、大手3社は8874キロリットル(同37.2%減)、中小系は2万9883キロリットル(同17.8%減)と年々、減少傾向にあり、特に大手3社と中小系での減少が目立つ結果となった(図6)。これは、大手3社では原料となる乳製品の価格が上昇したことにより、従来の加工乳生産の優位性が低下したため他の製品にシフトしたこと、中小系は原料の多くを購入しているため原料価格の上昇により、生産を縮小したためとみられる。一方、農プラ系は年々減少傾向にあったが、26年度は一部の農プラ系で増加し18万498キロリットル(同45.2%増)となった。


4 原材料使用割合の動向

 各品目における原材料使用割合を調査した。ここでの使用割合とは、以下の算定式によって求められたものであって、乳製品以外の水やフルーツなどを含め、原材料ベースの重量で単純に算出したものである。


(1)はっ酵乳

 平成26年度のはっ酵乳の原材料使用割合は、生乳(注6)が18.9%と前年度よりも1.3ポイント減少、脱脂粉乳も3.1%と同0.2ポイント減少した。一方、脱脂濃縮乳は、11.1%と同0.5ポイント減少したが、過去5年間で見ると増加傾向となっている(図7)。最近では、大手乳業のはっ酵乳の無脂乳固形分の供給源として脱脂粉乳から風味や生産効率の高い脱脂濃縮乳へシフトしてきている。

 同年度の原材料使用割合を乳業類型別に見ると、大手3社は生乳や脱脂濃縮乳、農プラ系および中小系は生乳や脱脂粉乳を乳固形分の供給源として使用している(表3)。

(注6) 「殺菌乳」「部分脱脂乳」などを含む。



(2)乳飲料

ア 色物乳飲料

 平成26年度の色物乳飲料の原材料使用割合は、生乳が8.4%と前年度よりも1.0ポイント増加、脱脂濃縮乳も3.1%と同0.2ポイント増加した(図8)。一方、ホエイ類は、0.9%と同2.3ポイント減少した。

 同年度の原材料使用割合を乳業類型別に見ると、大手3社は脱脂濃縮乳、バターやホエイ類を、農プラ系と中小系は生乳を乳固形分の供給源として使用する傾向が強い(表4)。


イ 白物乳飲料

 白物乳飲料の原材料使用割合は、生乳および脱脂濃縮乳がいずれも25年度に増加に転じ、平成26年度は生乳が14.5%と同0.3ポイント、脱脂濃縮乳が9.2%と同1.2ポイントとそれぞれ増加した(図9)。

 一方、26年度の脱脂粉乳の割合は2.1%と同0.4ポイントの減少となった。

 26年度の原材料使用割合を乳業類型別に見ると、大手3社は生乳や脱脂濃縮乳、農プラ系と中小系は生乳を乳固形分の供給源として使用しており、色物飲料と同様に乳業類型間で違いが見られた(表5)。


(3)加工乳

 平成26年度の加工乳の主な原材料使用割合は、生乳が16.4%と前年度よりも6.4ポイント減少し、脱脂粉乳も2.7%と同0.2ポイント減少となった(図10)。一方、脱脂濃縮乳は15.5%と同2.9ポイント増加となり、加工乳においても生乳から脱脂濃縮乳への置き換えが進んでいるものとみられる。

 同年度の原材料使用割合を乳業類型別に見ると、乳固形分の供給源として、大手3社は生乳、脱脂濃縮乳が多く、農プラ系と中小系は生乳、脱脂濃縮乳が大手3社よりも少ない一方、脱脂粉乳が多い結果となった(表6)。



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