需給動向 海外

◆豪 州◆

牛飼養頭数、2017年に回復の見通し


牛肉生産量、大幅に減少

豪州統計局(ABS)によると、2016年7月の成牛と畜頭数は、54万8000頭(前年同月比34.9%減)と大幅に減少した(図5)。2013年から2015年前半にかけて、干ばつにより放牧環境が悪化したことから、雌牛を中心にと畜頭数が増加した。その後、干ばつの終息により牛群再構築のために雌牛の保留が増加したが、本年5月以降、降雨に恵まれ放牧環境が改善しており、生産者の多くは、引き続き雌牛を保留していることに加え、繁殖雌牛が減少したことにより子牛の生産頭数も少なくなっているため、と畜頭数は、雌牛雄牛ともに大幅に減少しているものと見られる。

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と畜頭数の減少により、同月の牛肉生産量(子牛肉を除く)は、15万7321トン(同33.1%減)と13カ月連続で前年同月を下回った。

肉牛取引価格、700豪セント台で高止まり

豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、6月から上昇し、8月には726豪セント(574円:1豪ドル=79円)と最高記録を更新した(図6)。その後は若干下げたものの概ね横ばい傾向で推移し、9月末時点では、717豪セント(566円)となった。

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豪州農業資源経済科学局(ABARES)が発表した肉牛農家の経営動向に関する調査結果によると、2015/16年度の肉用牛経営の現金ベースの収支は、高い肉用牛取引価格を反映して、前年度比33.4%増の162200豪ドル(1281万円)と大幅に改善している。

肉用牛経営の収支が改善されたことで、低迷する生産者乳価で苦しむ酪農家の中には、乳牛への肉用牛の種付け、肉用牛の飼養、肉用牛経営への転換などの動きもでてきていると言われている。

2017年6月末時点の牛飼養頭数、前年同月比2.7%増へ上方修正

ABARESは2016年9月、2016/17年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しを公表した(表1)。

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2016/17年度の牛と畜頭数は、牧草の生育環境が一層改善したことにより牛群再構築がさらに強まっていること、雌牛が減少したことにより子牛の生産頭数も減少していることから、750万頭(前年度比14.7%減)と、前回(2016年6月)の822万頭からかなり下方修正された。それに伴い、牛肉生産量も、穀物肥育牛と畜割合の増加による平均枝肉重量の増加により、牛と畜頭数の減少を一定程度相殺するものの、212万トン(同9.5%減)とかなり下方修正された。

一方、2017年6月末時点における牛飼養頭数は、良好な降雨による放牧環境の改善により牛群再構築が一層進展することや子牛の事故率の減少が見込まれることから、2680万頭(前年比2.7%増)へ上方修正され、3年ぶりに増加する見通しとなった。

また、牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い102万5000トン(前年度比12.2%)と下方修正された。米国向けは米国国内での牛肉生産量の増加により、中国向けはブラジル産との競合により、ともに前回から下方修正された。一方、日本向けは、日本国内の生産量の減少から、前年度比でわずかに増加する見込みに上方修正された。

(調査情報部 大塚 健太郎)


				

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