需給動向 国内 |
平成28年8月の牛肉需給を見ると、生産量は、と畜場稼動日数が前年同月を上回ったこともあり、2万5631トン(前年同月比0.9%増)と、17カ月ぶりに前年同月を上回った。品種別では、和牛が1万778トン(同3.6%減)と減少した一方、乳用種が8326トン(同0.6%増)と増加に転じ、交雑種は酪農家における乳用牛への黒毛和種交配率の上昇により、6157トン(同9.8%増)と2カ月連続で前年同月を上回った。
輸入量は、前年同月をかなりの程度上回る3万8717トン(同8.3%増)、うち冷蔵品が1万9579トン(同17.1%増)、冷凍品が1万9079トン(同0.7%増)となった。推定出回り量は前年同月並みの6万3597トン(同0.1%減)となり、推定期末在庫は前月から606トン積み増したものの、12万7438トン(同10.2%減)と8カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
出生頭数の減少により高値が続く
肉用子牛取引価格(全国・雌雄平均)の推移を見ると、黒毛和種については、高齢化や後継者不足による繁殖農家の離農に加え、平成22年の口蹄疫、翌23年の東日本大震災および大規模生産者の倒産の影響による繁殖雌牛の減少、ひいては出生頭数の減少を背景として、24年以降、右肩上がりで推移してきた。黒毛和種の肉用子牛取引価格は、28年度に入っても、前年度と比べて2割以上の値上がりが続いており、8月は1頭当たり81万円(前年同月比23.3%高)と、当機構が取引情報の収集を開始した2年度以降の最高値を更新した。この背景としては、年末に次いで子牛導入の需要期となる夏場であることに加え、子牛出荷頭数が例年と比較して低水準だったことが挙げられる(図1)。
ホルスタイン種については、酪農家の離農や乳用牛への黒毛和種交配率の上昇などから、黒毛和種と同様、近年は出生頭数の減少が続いている。ホルスタイン種の子牛の取引形態は、市場を介さない相対取引が多数を占めるものの、子牛取引価格の上昇により市場出荷は増加傾向にある。28年8月は、1頭当たり21万3000円(同1.1%安)と依然として高水準にあるものの、枝肉相場が軟調にあることから、2カ月連続で値下がりした(図2)。
交雑種については、酪農家が副産物収入を増やすために、子牛価格の比較的高い交雑種の生産意欲を高めていることを受け、乳用牛への黒毛和種交配率が上昇していることから、出生頭数は増加傾向にある。しかしながら、肉用子牛全体の頭数不足や堅調な枝肉卸売価格などを背景に、28年8月は1頭当たり40万9000円(同6.2%高)と過去最高を更新した(図3)。
牛枝肉卸売相場を見ると、例年、相場が上昇する梅雨明け以降も、高値疲れによる需要減退などにより、弱含みの展開となっている。一方で、子牛取引価格は依然として高水準にあることから、肥育経営にとって厳しい状況が続いている。肉用子牛の生産基盤の強化に向けて、畜産クラスター事業をはじめ、さまざまな対策が講じられる中、28年2月時点で肉用種の子取り用めす牛の飼養頭数が6年ぶりに増加に転じたことで、今後の子牛取引の動向が注目される。
(畜産需給部 二又 志保)