需給動向 海外

◆アルゼンチン◆

生乳生産は減少も、輸出は前年並みを堅持


エルニーニョ現象の影響により主要酪農地域で水害

アルゼンチン農産業省(MINAGRI)によると、2016年1〜6月の生乳生産量は、前年同期比12.6%減の463万8400キロリットルとなった(図25)。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、エルニーニョ現象の影響が強まった結果、ブエノスアイレス州を除く主要酪農地域の多くで多雨により冠水などで草地の状態が大幅に悪化した。しかしながら、酪農家の多くは乳価が低迷していることも相まって、補助的な濃厚飼料の給与量を減らしてしまった結果、生乳生産は大きく落ち込んだとみられている。酪農生産の現場では、深刻なインフレに伴う飼料や資材価格の高騰にも悩まされている。

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この結果、酪農家の経営状況は、直近20年間で最悪の危機に瀕しているとされ、2015年12月10日の政権交代を期に好転が見込まれた酪農業界としては苦しい状況となっている。

ペソ安米ドル高の追い風を受けた乳製品輸出

アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2016年1〜7月の主要乳製品輸出量は、粉乳やバターが落ち込んだ一方、チーズやホエイに関しては大きな伸びを記録した(表9)。生乳生産が落ち込んでいるにもかかわらず、主要乳製品輸出量の合計が前年並みとなった要因は、政権交代後、為替制度を変更して実質的にペソの切り下げが行われた結果、価格競争力が増したことによる(図26)。

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加えて、2007年に前政権下で導入された輸出登録制度(ROE BLANCO)が、3月30日に撤廃されたことも輸出環境の改善につながったと考えられる。同制度は、国内需給の逼迫を招かないよう、輸出に際して数量、輸出先などの事前登録を義務付けることにより、政府が実質的に輸出を規制するものであった。ROE BLANCOの撤廃により、牛乳・乳製品輸出の透明性と公平性が改善され、乳業メーカーは自由に輸出を行える環境が整ったとされている。

現在は、多雨により生乳生産量が減少したこともあり、乳業メーカーは潜在能力を発揮できずにいるが、今後、天候が回復すれば、生乳生産の増加、さらには乳製品輸出の拡大が期待されている。

(調査情報部 米元 健太)


				

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