需給動向 海外

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生乳出荷量の減少で、乳価が9カ月ぶりに上昇


生乳出荷量は減少傾向

欧州委員会によると、2016年7月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.4%減の1307万トンとなった(図17)。増産基調で推移していた生乳出荷量は、前月、15カ月ぶりに前年同月を下回ったが、今月も続けて減少となった。

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国別では、EU全体の生乳出荷量の21%を占めるドイツが同0.9%減、同じく15%を占める第2位のフランスが同1.0%減となっており、生乳クオータ制度の廃止以降続いていたEUの増産基調は、乳価低迷などを要因にして、主要国を中心に減産傾向になっている。

乳価は9カ月ぶりに前月を上回る

欧州委員会によると、2016年8月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比11.6%安の100キログラム当たり26.40ユーロ(1キログラム当たり30.36円:1ユーロ=115円)となった(図18)。

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同価格は、24カ月連続で前年同月を下回る中、前月比でも8カ月連続で下落し続けていたが、生乳出荷量の減少などを受けて、9カ月ぶりに前月比3.0%高と上昇に転じた。

生乳出荷削減奨励事業の申請結果(1回目)を公表

欧州委員会は9月27日、生乳供給量の減少を目的とした生乳出荷削減奨励事業の1回目の申請結果(9月21日申請期限)を公表した。それによると、ギリシャを除く27加盟国の合計5万2101の生産者から、計106万21トンの生乳出荷削減の申請があった。

欧州委員会は本年7月、低迷する市況などにより困窮する生産者への支援として総額5億ユーロ(575億円)の新たな補助を公表し、その関連規定を9月9日にEU官報へ掲載したところであるが、同事業はそのうちの一つで、予算額は1億5000万ユーロ(172億5000万円)となっている。

同事業は、4つの生乳削減対象期間があり、1回目は2016年10月~12月、2回目は2016年11月~2017年1月、3回目は2016年12月~2017年2月、4回目は2017年1月〜3月となっている。前年同期比で削減した生乳1キログラム当たり14セント(16.1円)の奨励金が交付される。削減対象となる限度数量は107万1428トンとなっており、各対象期間内においてこの限度数量に達するまで実施される。

生産者は最小で1500キログラムから申請でき、前年同期比50%までの削減が補助対象として認められる。生産者は、削減対象期間の終了後、45日以内に証拠書類を提出し、奨励金を受け取ることになる。

1回目の申請結果を国別に見ると、最大の申請量はドイツの28万6049トンとなり、フランスの18万1398トン、英国の11万2028トンが続く。また、最大の申請者数はフランスの1万2957者となり、ドイツの9947者、アイルランドの4447者が続く。生産者数に対する申請者数の割合は、アイルランドが最大で24%となり、ベルギー、オランダがそれぞれ22%となった。1生産者当たりの平均申請数量は20トンとなり、奨励金額は2800ユーロ(32万2000円)となる。

なお、限度数量から今回の申請数量を差し引いた1万1407トンについては、2回目の削減対象期間に持ち越しされる(申請期限:10月12日)。今回申請した者は、対象期間の重なる申請はできないことから、次に申請できるのは4回目となる。

また、総額5億ユーロ(575億円)のうち残りの3億5000万ユーロ(402億5000万円)は、加盟国に配賦され、加盟国の裁量により、この生乳出荷削減奨励事業の奨励金単価に上乗せできることになっている。

(調査情報部 大内田 一弘)


				

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