需給動向 海外 |
フィードロット飼養頭数、減少が続く
2015/16年度の牛肉生産量、かなり減少
豪州統計局(ABS)によると、2016年6月の成牛と畜頭数は、61万8600頭(前年同月比23.1%減)と大幅に減少した。同月の牛肉生産量(子牛肉を除く)は、1頭当たりの枝肉重量の増加が、成牛と畜頭数の減少を一定程度相殺したものの、17万5728トン(同21.6%減)と12カ月連続で前年同月を下回った。
この結果、2015/16年度(7月〜翌6月)の牛肉生産量は、231万5994トン(前年度比11.7%減)とかなり大きく減少し、これに子牛肉の生産量2万7520トン(同29.9%減)を加えても234万3514トン(同12.0%減)にとどまった(図7)。
これは、2013年からの度重なる干ばつの発生に伴って繁殖雌牛の淘汰が進み、牛飼養頭数が減少したことに加え、草地環境が好転して牛群再構築を進めていることから、出荷される牛の頭数が大幅に減少しているためである。
肉牛取引価格、史上初めて700豪セントを突破
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、6月から一段高く上昇し、最高記録を更新し続け、8月9日に1キログラム当たり700豪セント(560円:1豪ドル=80円)を突破し、その後も17日には同726豪セント(581円)を記録した(図8)。
こうした高値は、牛飼養頭数の減少や草地環境の好転により保留する傾向が強まって、牛の取引頭数が減少している一方、牧草の環境が改善した牧草肥育業者の導入意欲が高まり、牧草肥育業者と穀物肥育業者の間で肥育もと牛の導入をめぐる競争が強まっていることが影響している。
しかしながら、EYCI価格は、2016年8月末日時点で同706豪セント(565円)と、ピークからやや下落しており、肥育もと牛の高騰による肥育業者の収益性悪化の懸念から頭打ちとなったのではないかとの指摘もある。
フィードロット飼養頭数、前年同月比4.8%減
豪州フィードロット協会(ALFA)およびMLAによると、穀物肥育牛の4〜6月のと畜頭数は、韓国、中国およびEU向け需要増を反映して71万2504頭(前年同期比3.2%増)とやや増加した。2015/16年度(7月〜翌6月)で見ると、穀物肥育牛のと畜頭数は、282万8877頭(前年度比1.2%増)となり、と畜頭数全体に占める割合も34.5%(図9、同4.9ポイント増)と前年度から増加した。
しかしながら、2016年6月末日現在のフィードロット飼養頭数は、91万967頭(前年同月比4.8%減)と、3月末に続き前年同月を下回った。肥育もと牛の不足に加え、肥育もと牛の取引価格が記録的な高水準で推移していることから、今後も飼養頭数の減少が懸念されている。
日本向けグレインフェッド牛肉輸出、再び前年割れ
MLAによると、2016年7月の日本向け牛肉輸出量は、グラスフェッド牛肉が1万1977トン(前年同月比9.6%減)と15カ月連続で前年同月を下回り、グレインフェッド牛肉は、5、6月は前年同月を上回ったものの、1万1347トン(同1.0%減)と、再び前年割れに転じている(図10)。
グラスフェッド牛肉は、豪州国内における牧草肥育業者の保留傾向による生産量の減少が影響している。一方、グレインフェッド牛肉は、米国の生産量の回復に伴い、一部の需要が米国産に移っているものの、バラを中心に焼き材向けに引き合いがあったことから、グラスフェッド牛肉に比べて減少幅はわずかとなっている。
(調査情報部 大塚 健太郎)