需給動向 国内 |
平成28年7月の牛肉需給を見ると、生産量は2万8250トン(前年同月比6.0%減)と、16カ月連続で前年同月を下回った。品種別では、和牛が1万3195トン(同8.5%減)、乳用種が8122トン(同8.4%減)と減少した一方、交雑種は酪農家における乳用牛への黒毛和種交配率の上昇により、6573トン(同2.6%増)と増加した。
輸入量は、前年同月を大幅に上回る5万7861トン(同24.7%増)、うち冷蔵品が2万1046トン(同17.6%増)、冷凍品が3万6712トン(同29.0%増)となった。推定出回り量は前年同月をかなりの程度上回る8万1842トン(同7.2%増)となり、推定期末在庫は前月から4110トン積み増し、12万6832トン(同12.2%減)と、7カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
米国産冷蔵品輸入量の大幅増が続く
平成28年7月の国別輸入量を見ると、最大のシェアを占める豪州産は、牛群再構築に伴う出荷頭数の減少により、減少傾向で推移してきたが、冷蔵品1万534トン(同3.3%増)、冷凍品1万9068トン(同12.2%増)と、いずれも増加に転じた。
次いで輸入量の多い米国産は、生産量の回復に伴う出荷増により、冷蔵品が9631トン(同37.6%増)と8カ月連続で前年同月比2桁増となり、冷凍品についても1万3724トン(同49.6%増)と大幅に増加した。為替相場が円高米ドル安で推移したことで、未通関在庫が通関されたことも輸入量の増加につながったものと思われる。
1月から7月までの累計では、豪州産は冷蔵品が前年同期比5.5%減、冷凍品が同8.8%減と減少した。一方、米国産は冷蔵品が同50.0%増、冷凍品が同0.9%増といずれも増加した(図1)。豪州産への依存度が高いひき材以外は、ショートプレート(「ばら」に相当)やチャックアイロール(「かたロース」に相当)を中心に、米国産への代替が進んでおり、豪州産の減少以上に米国産が増加していることが見て取れる。
輸入品仲間相場、米国産の供給増から豪州産も低下
輸入品仲間相場(部分肉卸売価格)を見ると、テーブルミートとしても業務用としても汎用性の高い米国産チャックアイロール(冷蔵品)は、4月上旬をピークに低下し、直近では1キログラム当たり1100円を下回った。また、焼肉店や牛丼店などで多く使用されるショートプレート(冷凍品)は、冷蔵品の凍結回しの発生などから、同553円と中国向けの輸出需要により高騰した一昨年秋の半値以下の水準となっている。豪州産フルセット(グラス・冷蔵品)については、牛群再構築に伴う出荷減による現地相場高から、不需要期の6月以降も高い水準で推移してきたが、米国産の供給増による荷余り感から、7月をピークに低下し、直近では同1000円を下回った。一方、ハンバーガーパティなどの加工用として使われることの多い豪州産カウミート(85CL(注)・冷凍品)は、豪州への依存度が高いことから同700円前後と緩やかな上昇基調となっている(図2)。
高値疲れや輸入量の増加などを受けて、国産枝肉相場も弱含みの展開となっており、今後の輸入動向が注目される。
注:CL(Chemical Leanの略)とは、赤身肉の含有率を表す。例えば、85CLの場合、赤身肉が85%を占める。
豪州産生体牛の輸入停止措置、約3カ月ぶりに解除
農林水産省は、平成28年8月25日付で豪州から輸入される生体牛の輸入停止措置を解除した。日本は、ここ数年、年間1万頭前後の生体牛を豪州から輸入してきたが、乳用繁殖牛において家畜伝染病のヨーネ病が多頭数摘発されたことを受けて、28年5月27日以降、輸入停止措置が取られていた。
子牛取引価格の高騰が続く中、国内肉用牛の重要な供給源である豪州産肥育もと牛の早期の輸入停止措置解除を求める声が強まっていたが、豪州政府側による原因究明と対応が取られたことから、約3カ月ぶりに解除された。
(畜産需給部 二又 志保)