需給動向 海外

◆ブラジル◆

鶏肉輸出は引き続き好調


レアル安の為替相場が後押し

ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2016年1〜6月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比14.7%増の206万524トン(製品重量ベース)と過去最高を記録した(表4)。主な要因として、為替相場が大幅なレアル安米ドル高で推移したことが挙げられる。

輸出先別の内訳を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは、同国内で鶏肉生産の拡大が続く中でも、旺盛な需要を受けてやや増加した。第2位には、中国向けが日本向けを抜いて浮上した。中国は、米国での鳥インフルエンザ発生に伴い2015年1月9日以降米国からの鶏肉や種鶏の輸入を停止しており、旺盛な需要を賄うべくブラジル産の引き合いが大幅に強まっている。また、第3位となった日本向けも、同国内で牛肉が高値で推移する中、安価な輸入鶏肉需要が高まったため、かなり大きく増加した。



なお、2016年1〜6月の平均輸出単価は、米ドル建てで同13.1%安となったが、為替相場が前年同期比2割程度レアル安米ドル高で推移したことから、現地食肉企業の売り上げはレアル建てで増加したものとみられる(図22)。しかしながら、8月以降は前年よりもレアル高基調で推移すると見込まれることから、輸出への影響が懸念される。



長引く生産コスト高

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の養鶏・養豚調査センター(CIAS)が毎月公表しているブロイラー生産コスト指数によると、主産地パラナ州のブロイラー生産費は、飼料の主原料であるトウモロコシ価格が輸出増および生産減により高騰したため、高水準で推移している(図23)。国家食料供給公社(CONAB)は政府備蓄のトウモロコシを放出してきたものの、依然として生産現場ではトウモロコシ需給がひっ迫傾向にある。ブロイラー生産費が上昇する中、長引く景気低迷により国内鶏肉価格は低迷しており、特に国内向け中心の処理加工場は減産調整を進めるなど苦境に立たされている。一方、輸出向け中心の処理加工場は、好調を維持している。

現地関係者からは、こうしたトウモロコシ需給が根本的に緩和されるのは、2016/17年度(10月〜翌9月)の第1期作トウモロコシが収穫される来年2月以降ではないかとの声が聞かれる。



2016年は輸出が過去最高の見通し

ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)が2016年7月12日に発表した見通しによると、2016年のブラジルの鶏肉生産量は、1300万トン(前年比0.8%減)と見込まれている。国内需要は景気悪化の影響で落ち込む一方、輸出は中国をはじめとした旺盛な需要を受け前年比8%増の460万トンと過去最高を更新すると予測されている。

ブラジル政府は、米国の鳥インフルエンザ発生によって輸出にブレーキがかかった米国産の代替需要を取り込むべく、とりわけ、中国やメキシコに対して、輸出認定施設の増加に向けた交渉を進めている。ブラジル国内の政治の混乱を反映した為替相場の動きが懸念材料ではあるが、8月31日にルセフ大統領の罷免が確定したことで、今後の為替相場が安定するのかどうか注目が集まっている。

(調査情報部 米元 健太)


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