需給動向 海外

◆豪 州◆

生乳生産は減少も、国際需給は底を脱したとの見方


7月の生乳生産量、前年同月を10%以上下回る

デーリー・オーストラリア(DA)によると、2016年7月の生乳生産量は62万4600キロリットル(64万3300トン相当、前年同月比10.3%減)とかなりの程度減少した(図35)。

主産地のビクトリア(VIC)州で40万8000キロリットル(42万200トン相当、同11.2%減)とかなり大きな減少となるなど、2016/17年度(7月〜翌6月)の生乳生産は、全地域で前年同月を下回るスタートとなった。豪州最大の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン(MG)社や豪州フォンテラ社といった、主要乳業メーカーの集乳量も、前年同月比で2割近く減少している。

こうした減産には、乳価下落による酪農家の生産意欲の低下や、肉牛価格の高騰に伴う乳牛の淘汰が、大きく影響しているとみられる。7月の乳牛と畜頭数は1万4359頭と前年同月の約1.5倍となっており、2015/16年度累計でも10万9184頭(前年度比37.4%増)と大幅に増加している。

一方、生産環境については、エルニーニョ現象が猛威を振るった前年と比べて明らかに良好になっている。豪州気象庁によると、主産地をはじめ豪州全体で、向こう3カ月にわたって潤沢な降雨があるとされ、牧草が順調に生育するとみられており、これを受けて、かんがい設備の導入が多いVIC州における主要なダムの貯水率も上昇しているとしている。



6月乳製品輸出、粉乳類の減少目立つ

DAが公表した2016年6月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなった(表5、図36)。





品目別に見ると、脱脂粉乳と全粉乳の減少が目立った。これは、インドネシアやマレーシア、サウジアラビアといった東南アジアや中東向けのNZ産の輸出が増加したことが要因とみられる。一方、バターについては中東向けが、チーズについては中国向けの増加から、前年同月を上回った。

乳製品国際価格、底を脱したとの見方

2016年8月16日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表6、図37)。





表の4品目はいずれも前回を上回っており、特に全粉乳は前回比19.0%高と、2015年10月以来となる10%を超える上昇となったうえ、前年同期比でも2回続けて40%以上の上昇を記録するなど、価格上昇が顕著であった。これは、EUをはじめとした主要な酪農地域で減産の兆候がみられることに加え、中国の輸入需要が回復基調にあることが背景にあるとみられる。

現地報道によると、今回の入札では、フォンテラ社がGDTにおける総取引数量を増やしたにもかかわらず取引価格が上昇したことから、乳製品国際価格は底を脱したとの見解も多い。一方で、前年の同時期にも同様の価格上昇がみられたものの、その後下落に転じたことから、なお予断を許さないとの見方もある。

豪州最大手乳業メーカー、2015/16年度の乳価が確定

MG社は8月24日、2015/16年度の通期決算と生産者支払乳価を発表した(表7)。

同社によると、集乳量は、極度の乾燥気候による牧草の生育不良などに伴い、349万1000キロリットル(前年度比2.5%減)と前年度をわずかに下回った。また、売上については、乳製品国際価格の低迷の影響を受け、27億8000万豪ドル(2224億円:1豪ドル=80円、同3.3%減)と前年度をやや下回り、生産者支払乳価についても、乳固形分1キログラム当たり4.80豪ドル(384円、同15.9%安)と大幅な切り下げを余儀なくされたとしている。

今後の見通しについてMG社は、小売向け乳製品や高栄養価の粉乳といった高付加価値部門の強化や、工場の更新による生産コストの低減などにより、売上増や収益性の改善を図りたいとしている。



(調査情報部 竹谷 亮佑)


				

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