需給動向 海外 |
生乳出荷量、クオータ制度廃止以降初めて減少に転じる
生乳出荷量は15カ月ぶりに前年割れ
欧州委員会によると、2016年6月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.6%減の1319万トンとなった(図30)。生乳出荷量は、2015年4月の生乳クオータ制度の廃止以降、連続して前年を上回って推移していたが、乳価低迷などを受けて15カ月ぶりに前年割れとなった。
主要国で同様の動きが見られ、オランダ(前年同月比4.8%増)、アイルランド(同4.4%増)を除いて、EU最大の生乳出荷国であるドイツが同1.5%減、2番目のフランスが同3.3%減、3番目の英国が同7.2%減、そのほかポーランドが同2.2%減、イタリアが同2.7%減と軒並み前年を割った。生乳クオータ制度の廃止以降続いていたEUの増産基調は、生乳生産のピークを終え、ドイツ、フランスを中心に減少局面に移りつつある。
生乳取引価格は23カ月連続前年割れ
欧州委員会によると、2016年7月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比14.7%安の100キログラム当たり25.53ユーロ(1キログラム当たり29.61円:1ユーロ=116円)となった。
生乳出荷量は減少に転じたものの、乳製品国際相場の低迷が継続していることなどもあり、同価格は、今年最安値を更新した前月からさらに0.9%安と、23カ月連続の前年同月割れとなった(図31)。
脱脂粉乳およびバターの在庫量が積増し
欧州委員会が9月7日に公表した統計によると、脱脂粉乳の公的在庫量(注1)および民間在庫量(PSA)(注2)を合わせた6月末時点の在庫量は、前月比27.9%増の32万9000トンとなった(図32)。内訳は、公的在庫量が28万9000トン(前月比29.7%増)、民間在庫量が3万9000トン(同16.3%増)となっている。在庫量については、当該申請が始まって以降、右肩上がりで推移している。なお、脱脂粉乳平均卸売価格は、5月2月の週に今年最安値となる100キログラム当たり162ユーロ(1万8792円)となって以降、徐々にではあるが値を戻しつつあり、直近の8月29日の週には同185ユーロ(2万1460円)となっている(図34)。
一方、バターの6月末時点の民間在庫量(PSA)は、前月比7.4%増の9万9000トンとなった(図33)。2015年後半には減少傾向にあった在庫量は、2016年に入ってから価格の低迷などを背景に再び増加傾向にある。ただし、バター平均卸売価格は、直近の8月29日の週に同345ユーロ(4万20円)となった。同価格は、5月2月の週に今年最安値となる同250ユーロ(2万9000円)となって以降、輸出量の増加などを背景に上昇傾向にある(図34)。なお、バターについては、卸売価格が公的買入価格を上回って推移していることから、公的買入は実施されていない。
(注1) 各加盟国における脱脂粉乳およびバターの卸売価格が公的買入価格を下回った場合、当該国の買入機関が製造業者または取扱業者の申請に基づき同価格で買い入れるもの。
(注2) 民間企業が保管する脱脂粉乳、バターおよびチーズの保管費用の一部を補助するもの。
(調査情報部 大内田 一弘)