調査・報告 専門調査  畜産の情報 2016年10月号


学校給食における国産牛肉などの利用推進の取り組み
〜高知県の例〜

東京農業大学客員教授・麻布大学名誉教授 押田 敏雄



【要約】

 学校給食において国産牛肉の利用は進んでいない。そのような背景下で高知県学校給食会と高知県は「農畜産物食育推進事業」で土佐あかうし土佐褐毛牛、土佐はちきん地鶏、土佐ジローなどを対象とした学校現場での講義や県の特産品の学校給食への提供を行っている。また、地域的であるかも知れないが、「こどもたちに肉をたくさん食べさせたい」と言う担当者の熱意のほども感じ取ることが出来た。

 同県の事例は学校給食における国産畜産物の需要の安定と拡大に資する知見につながるもの と思われる。

1 はじめに

学校給食において国産牛肉の利用は進んでいない。それは価格が高いために学校給食の中で使われにくいこと、また一部には保護者による放射能汚染農畜産物忌避の圧力があることなどによるものと思われる。しかし、そのような中で、食育の取り組みと連携しながら学校給食で国産牛肉の利用を推進している事例がある。この事例について、その背景や工夫、関係機関などの支援について明らかにすることにより、学校給食における国産畜産物の需要の安定と拡大に資する知見を得ることが期待できる。

日本食肉消費総合センターのアンケート調査によれば、学校給食において国産牛肉を使用していない学校が給食実施校の半数程度あると見られる。このような中にあって高知県では月1回〜半年に1回程度国産牛肉を給食で利用しており、その利用頻度は高いと言える。この背景には、高知県が進めている食育への取り組みがあると思われることから、高知県の特色ある畜産物「土佐あかうし」、「土佐はちきん地鶏」および「土佐ジロー」(以下、「特色ある高知県産食肉」という。)の学校給食における利用推進について、関係機関および関係者からヒアリング調査を行い、高知県学校給食における取り組み方法を明らかにしたい写真13)







2 調査の目的と期待される効果

(1) 調査の目的

今回の高知での調査目的は3つある。(1)高知県が県単事業で実施している「農畜産物食育推進事業(高知の特産物ジュニア博士育成出前事業)」の概要および実績と成果(県および県学校給食会)、(2)特色ある高知県産食肉の生産流通状況(県)、(3)学校給食における特色ある高知県産食肉の利用頻度、提供メニューと学校栄養教諭からみた評価(県内の学校給食栄養教諭)。

(2) 期待される効果

今回の調査結果次第では、国産畜産物(主に和牛および地鶏)の需要拡大を目指す糸口を見出すことがかなう可能性も含まれる。

(3) 調査先と調査方法

調査は高知県学校給食会、高知県地域農業推進課、高知県畜産振興課および東津野給食センターの4カ所を対象とした。

調査方法は事前に調査の意図を電話、文書で説明し、あらかじめ調査用紙を送付し、該当場所に出向き、担当者からヒアリング形式で聞き取りを実施した。

3 調査結果

高知県での学校給食は米飯給食が主体で週5日中4.3回実施している。これは全国で一番高い実施率だという。なお、土佐清水市は学校給食を実施していない。ここでは弁当持参あるいは学校から近い所の子供は自宅に帰って昼食を摂っているようである。

(1) 高知県学校給食会

ア 県学校給食会の歩み

昭和21年の終戦直後、連合軍の援助物資であった脱脂粉乳などによって、全国の小学校で学校給食が開始された。高知県では昭和27年に学校給食会が任意団体として、県下の児童、生徒に学校給食用物資(主にパンと脱脂粉乳)を供給する団体として発足し、その事務局を県教委体育保健課内に置き、給食実施校の連合組織として、物資の受け入れ、保管、供給機関として活動を開始した。

昭和3010月に文部省の外郭団体として日本学校給食会(現在の(独)日本スポーツ振興センター)が発足し、学校給食物資の取り扱いを開始したが、県では昭和3112月に、民法第34条に基づき、高知県教育委員会の認可を受け、「財団法人高知県学校給食会」とした。昭和327月に文部大臣より学校給食用物資供給責任団体の指定を受けた。また、昭和449月より、「高知県学校給食だより」を発行するようになった。

昭和5010月から、これまでの学校給食用指定物資に加え、文部大臣の承認物資である副食品(砂糖、缶詰、冷凍食品など)を取り扱うため、高知市城見町6-15に支所を開設し、業務の充実を図った。次いで、昭和514月、高知市若松町1016号に土地660平方メートル延べ建物435 平方メートルを取得した。さらに、同年8月、高知市若松町に配送用の用地と常温倉庫、事務所の建物を購入し独立し、事務所も当地に移転し、給食用物資の適正供給とともに学校給食の普及充実に努めた。

昭和6112月、高知市南久保1302に土地990平方メートルを取得し、昭和627月、現在の場所に、鉄骨2階建て延べ703平方メートルの学校給食用物資流通センターを完成させた。常温、低温、冷蔵および冷凍庫を完備し、学校給食用物資の適正円滑な供給と学校給食の普及充実に努めた。なお、平成2541日、公益財団法人・高知県学校給食会として再発足し、現在に至っている写真4)



なお、ここに紹介した学校給食会であるが、これには次の3つのタイプがある。(1)学校給食用物資総合センター:保管倉庫、調理室および検査室の3施設が整備されているもので、岡山県、群馬県、千葉県などがこのタイプである。(2)学校給食用物資流通センター:単に保管倉庫のみを所有するタイプで、高知県などはこのタイプである。(3)その他のタイプ:保管倉庫も持たないタイプで、石川県、徳島県など全国で10県あり、民間の貸倉庫を利用し、配送も民間委託している。

また、「公益事業」について、高知県の場合は公益の認定に当たり、物資供給事業の中でパン、牛乳は公益事業として認められたが、それ以外の一般物資は収益事業として整理された。他県では一般物資も公益事業として整理されているのが現状である。

さらに、「高知県学校給食会」と「高知市学校給食会」の関係であるが、高知市学校給食会は高知市内の学校の給食物資の取りまとめを行っている。一方で、高知県学校給食会の納入範囲は高知市を含む県内としている。政令指定都市などでは市段階でも給食会が設置されているが、その関係は高知県と同様である。県給食会と市給食会は対等独立の関係にあり、上部下部の関係にはない。

イ 学校給食会の取扱物資について

(ア)取扱物資

指定物資(米、牛乳)の他に一般物資として、缶詰類、うどんなど粉製品類、油脂類、青果類、豆その他の製品類、種実類、ジャムなど添加物類、砂糖類、調味料類、乳製品類、海産物類、練り製品類、つけもの類、生肉類、魚介類、冷凍食品、ふりかけ類を取り扱っている。

なお、生肉類取扱金額は20083000円であり、一般物資供給事業売上げ33635000円の約7%を占めており、その割合は低くはない。

(イ)配送

高知県は海岸線に沿って東西に約700キロメートルと長く、北は四国山脈が連なる。県内一円に給食用資材を配送しているが、常勤スタッフ10人中5人程度が配送業務を行っている。そのため、高知市から遠隔地域では毎日の配送はできず、山間部は週2回程度の配送となっている。

なお、食肉や魚介類などは冷凍で取り扱うために、冷凍倉庫を保有し、冷凍車が整備されている。

(ウ)納入物資の価格

高知県学校給食会では、毎年「給食会取扱物資価格表」を定め、県内の学校給食施設と教育委員会に配布し、その価格は年間一定額を基本としている。学校給食施設では、地元で入手不可能な物資について、学校給食会をはじめ学校給食物資を取り扱う業者に発注している。

ウ 食肉の取扱(物資供給事業)

県給食会が納品する牛肉、豚肉、鶏肉、その量、金額(平成26年度)

肉類の内訳:牛肉1,976キログラム、豚肉6,231キログラム、鶏肉7,900キログラム。売上金額は約2,000万円。なお、牛肉は土佐和牛を使用していたが、26年度は品不足のため国産和牛とした。

豚肉・鶏肉については、豚肉は県内生産が少ないために、愛媛県産を使用している。鶏肉は高知県産を使用し、うち地元地鶏である「土佐はちきん地鶏」も350キログラム程度使用している。

給食会が食肉を納入する理由と県内学校給食における食肉納入シェア−

給食会が関与する理由:食肉納入業者が無い地域や、有っても納入規格を処理できない地域は学校給食会が納入しているが、その割合は3割程度である。

高知市の例:高知市に関しては食肉納入組合に加盟している業者でないと納入できない。給食会は加盟していないので納入していない。

県給食会が扱う食肉の流通経路

牛肉、鶏肉:県内生産農家→全農高知県本部とりうし(加工・小売)給食会給食施設

豚肉:愛媛県生産農家愛媛県経済連とり丑給食会給食施設

なお、学校給食会以外から食肉を購入している給食施設では、地元の精肉店経由で購入している。

食施設への食肉納入価格の決め方について

入札の方法:高知県学校給食会納入施設では「入札」を行わず、毎年度始めに価格表を事前に提示している。なお、南国市では南国市給食会が物資選定委員会を設置して価格を決めるが、入札は学期ごとに実施。小規模給食施設の中には栄養士と納入業者の話し合いで価格を決めるところもある。

納入価格の決め方:とり丑からの見積もりにより年間供給価格を決めている。その271キログラムあたりの価格は、それぞれ(1)土佐あかうし(肩・モモ)3,750円 国産牛肉モモ3,100円 輸入牛肉バラ1,400円、(2)豚肉愛媛県産肩ロース 1,320円 同バラ1,600円 同スライス910円、(3)若鶏肉高知県産ささみ1,000円 同モモ980円 同胸肉730円、(4)土佐はちきん地鶏モモ2,880円 同胸肉2,000円であり、納入価格はスーパー店頭価格に比べて3割程度安いように見られる。

給食施設から学校給食会への食肉注文方法・納入方法

発注方法:月決めで使用日ごとの食肉規格と数量、切り方を指定し、給食会で取りまとめ、配送日ごとにとり丑に連絡している。

納品方法:配送日前日にとり丑から納品され、給食会冷蔵・冷凍庫で保管、使用当日に配送されている。

国産牛肉を利用する学校と利用しない学校に共通した特徴

学校栄養士による工夫:牛肉は高いので、栄養士は工夫している。一食当たりの給食費は小学校250円、中学校280円であるが月単位で食材費を工夫すれば牛肉の使用は可能である。

子供たちからのリクエストと栄養士のこだわり:子供たちからの「牛肉が食べたい」とのリクエストがある。または学校栄養士が本物を食べさせたいというこだわりが、高い牛肉でも利用する理由ではなかろうか。

地産地消の推進:給食時間中に給食についての説明が校内放送で行われている。高知県産農畜産物を紹介するとともに、給食でもその食材を提供することにより、地産地消を推進している。

国産牛肉の利用頻度が少ない理由と利用向上策

要望と工夫:使いたいという希望はあるので、ちょっとした工夫があれば使えるような状況にあるのではないか。

余裕と助成:給食費に余裕がある時には、豚肉が牛肉へ変わることはしばしばある。また、何らかの助成があれば牛肉利用は伸びるものと思われる。

エ 農畜産物食育推進事業について

事業の目的と内容、実施方法、年度実績

事業の目的:県内の小学校を対象とした高知県の特産農畜産物について学習する「高知の特産物ジュニア博士育成出前授業」(以下「出前授業」という)写真56)を行うことにより、県内の農畜産業をより理解する子供たちを育て、将来の県産農畜産物のファン作りにつなげるとともに、学校給食での利用を目指すことで、本県の特産農畜産物の生産振興と消費拡大を図ることを目的とする。





これまでの実績:平成21年度から実施され、平成27年度までの7年間に実施回数388回、実施市町村数延べ115カ所、対象にした品目数延べ67品目、受講者数15,673人となっている。

なお、平成26年度は33小学校で実施し、その対象者人数1,498人であった。特に土佐あかうし、土佐はちきん地鶏、メロンの授業が人気であった。

対象農畜産物:土佐あかうし、土佐はちきん地鶏、土佐ジロー、メロン、土佐茶、土佐文旦、小夏、ゆず、主要園芸品(ナス、キュウリ、ピーマン、しょうがなど13品目)であった。

「博士出前授業」について

授業の内容1時間目はパワーポイントなどを使った講義で、2時間目は試食などを行う。畜産に関する授業の講師は県畜産振興課職員が行うが、生産者に来ていただき、講義をしてもらうこともある。

出前授業の受講生や食育担当教諭の感想・評価

(1) 香南市の小学校の例では、授業対象者は4年生43人、授業の内容は「土佐あかうし」に関する講義と試食であった。授業を受けての学校での取り組みは、社会科の授業で、「高知県の特産物」について学習したが、今回の授業を受けて、再度、土佐あかうしについて調べてまとめをする。その他の特産物についても調べる活動につなげていきたいとのことであった。感想・意見としては、担当の先生は「上手に説明していただき、子供たちがよく理解できました。また、準備・段取りが大変よく助かりました。ありがとうございました」など、子供たちは「牛の種類や大きさ、牛の成長、和牛と国産牛の違い、牛は人と同じように頑張っていることがわかり、高知県の農業・畜産業が好きになった。初めて食べた土佐あかうしのお肉は、甘いかおりがして、塩で食べたがすごく美味しかった。今まで食べた中で一番美味しかったので、スーパーで売っていたら買いたいと思った」、などであった。

(2) 赤野小学校の例では「日頃、食べることのない食材、土佐和牛、土佐ジロー、エメラルドメロンなどについて生産者から、直接に飼育、栽培方法、生産者の願いや苦労、食品の特性などを聞く事ができる貴重な機会であった。この出前授業がなければ、これらを食べることもなく大人になってしまう児童もいると思われる。店頭で見かけると、あの時に学習した食品だと親近感を抱き、購買につながる」と言った感想が寄せられた。学習後には、家庭に授業内容を知らせ、児童の感想を伝えるようにした。保護者からは、めったにない貴重な機会だと喜ばれ、関心も高いようである。

出前授業による物資納入効果:土佐あかうしは品不足に加えて、価格が高いので給食としては利用し難いという問題がある。また、目に見えて納入量が増えるということはないが、今後に期待したい。

出前授業による土佐あかうしや土佐はちきん地鶏などの消費拡大効果・畜産農家の生産意欲向上効果:将来の消費拡大を期待している。これにより県産農畜産物の認知は広がっているので、生産意欲にも結び付いているのではなかろうか。

(2) 高知県地域農業推進課および畜産振興課

ア 高知県の農業・畜産生産について

高知県の農業・畜産生産について県庁で地域農業推進課および畜産振興課の担当者よりヒアリングを行った。

高知県の農業産出額は938億円全国で32、生産農業所得は271億円全国で36である。生産量の多い農作物は全国シェアでニラ24.1%、シシトウ38.0%、しょうが40.2%、ゆず51.6%、ぶんたん92.6%などがあげられる平成25年度実績。畜産分野で高知県の特色として、土佐あかうしが1,600頭、土佐ジローが雌雄で25,000羽、土佐はちきん地鶏が1万3,000羽飼養されていることが特徴的である。

イ 農畜産物食育推進事業の実施体制と予算規模について

平成25年度まで県が実施していたが、26年度から高知県学校給食会に委託して実施するようになった。その予算は26年度165万円、27年度153万円であった。

ウ 農畜産物食育推進事業についての教育関係と農業関係からの評価

食への感謝−命を頂いていることへの感謝−を教えることができたと、教育関係者から評価されている。

(3) 高知県東津野給食センター

ア 施設の概要

平成26年度の給食数、給食スタッフ人数、年間給食日数

津野町は東津野地域と葉山地域の2つに分かれ、給食センターも2カ所ある。

東津野給食センター写真7)は、小学校、中学校、子供稚園保育園と幼稚園の複合3施設に給食を提供し、一日の食数は245食で、5人のスタッフで運営している。また、年間提供日数は192日(中学校180日、小学校184日)となっている。



給食費について

給食費(保護者負担)は一食当たり、小学校低学年260円、高学年270円、中学校290円、子供稚園260円であり、これは食材費に充当されている。

設置者負担額も保護者負担額と同程度であり、設置者負担額は施設費、水道光熱費、人件費などに充当される。

食材納入業者の選定について

昔から納入業者は決まっている。食肉は学校給食会と須崎市の個人商店から仕入れる。学校給食会は週2回の納品なので、月曜日使用分を個人商店から仕入れる。割合は給食会7:個人商店3程度である。

イ 肉について

給食における食肉の利用について

学校給食の主菜に食肉が利用されている日数割合は68%とその利用頻度は高い。食肉が使われない日(32の主菜は主に魚であった。

牛肉は年間30回利用されている。他の地域と比べて利用頻度は高く、豚肉は68回、鶏肉は42回の利用であった。豚肉は給食にとって使いやすい食材となっている。

生徒たちに好評な食肉料理

牛肉では、見た目で原型を留めているものに人気があり、「サイコロステーキ」、「すき焼き」、「牛丼」が、豚肉では「しょうが焼き」が、鶏肉では「唐揚げ」、「照り焼き」などが好評であった。

給食献立決定の手順

1カ月分の献立をまとめて前月中に決めるが、センターへの配送は週2回なので、その曜日に合わせて魚、食肉を使うようにしている。なお、給食費は1カ月の中で収まれば良いので、サイコロステーキのリクエストがあったので、卒業祝いに提供するなど工夫している。

ウ 牛肉利用・食育について

東津野給食センターで国産牛肉の利用頻度と利用方法、利用する上での工夫

田舎の地域なので牛肉を頻繁に食べる家庭は少なく、給食で牛肉をたくさん食べさせてあげたいという思いから、野菜の価格が安いと牛肉に食材費をまわすなどして、国産牛肉を月に1〜2回提供している。

食育について実施していること

小学校では稲作やお茶の体験学習、弁当作りを行っている。また、中学校では、地産地消で地域の神楽の日に「さわ料理」写真8)などを作っている。皿鉢料理では婦人会が協力写真9)、体験学習では農家が協力してくれて、地域の人たちと子供たちの交流の場となっている。





「出前授業」の感想

今まで活用したことはなかったが、これから魚(県水産部が行う魚の出前授業)について行う予定がある。

学校給食において、国産牛肉の利用頻度が低い理由

利用頻度が低いのは価格が高いためで、補助金があれば利用頻度は上がるという意見があった一方で、安い食材を利用するなどして、組み合わせてやりくりすれば、牛肉もさらに多く使えるのではないだろうかと、工夫の余地があるとする声もあった。

4 まとめ

食育基本法に定める第2次食育推進基本計画平成233において、学校給食における地場産物使用割合の目標数値が定められた。この基本計画策定時は21.2%であり、平成27年度の目標値として30%以上を掲げたが、実際は25.8%に留まっている。給食に使う食材料精白米、食パン、ジャガイモ、トマト、豚肉など品目の30%を自県産食材にすることを目標としている。地場産物の使用拡大のための問題点として、農産物・加工品では使用時期が限定、量の確保が困難、価格が高いといった理由、畜産物・加工品では価格が高い、量の確保が困難、生産者が少ないことが挙げられる。

食育基本法では、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育および体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている」とされている。

各県では「道の駅」、農協などの直売所における地域の農林水産物の利用促進を図るため、多様な品目の生産・供給体制の構築および加工品の開発を推進するとともに、学校給食などにおける地域の農林水産物の安定的な生産・供給体制を構築し、地域の農林水産物の利用拡大を図っている。さらに、地域ぐるみでの取り組みを推進するため、地域における関係者の連携の場などの設置、地域の戦略などの策定を推進している。

高知県の出前授業はまさにこれらの趣旨に沿って、堅実に事業が進行していると思われた。なお、高知県として、特記すべきこととして、次の2つのことが挙げられる。

(1)県学校給食会の取り組み

地産地消を推進するために、「はちきんコロッケ」写真10)、高知市と連携して「高知にらまんじゅう」写真11)などを開発し、給食メニューとして食材供給も行っている。

前者は県内産さつま芋と土佐はちきん地鶏の、後者は県内産ニラと豚肉の組合せで、子供たちの人気は上々とのことである。





(2)担当者の熱意

牛肉は高知県津野町の東津野地域では年間30回利用されている。他の地域と比べて利用頻度は高く、他に豚肉は68日、鶏肉は42日の利用であった。子供たちは牛肉では、見た目で原型を留めているものに人気があり、「サイコロステーキ」、「すき焼き」、「牛丼」が好きなようであった。

担当者によれば、食費は1カ月の中で収まれば良いので、サイコロステーキのリクエストがあった時は卒業祝いに提供したそうである。なお、国産牛肉は月に1〜2回提供している。野菜の価格が安いと牛肉に食材費をまわすことができる。この地域は田舎なので牛肉を頻繁に食べる家庭は少ないので、給食で牛肉をたくさん食べさせてあげたい。

食育については、中学校では、地産地消で地域の神楽の日に「皿鉢料理」などを作り、小学校では稲作やお茶の体験学習、弁当作りを行っている。皿鉢料理では地域の婦人会が協力、体験学習では農家が協力してくれて、地域の人たちと子供たちの交流の場となっている。

学校給食において、国産牛肉の利用頻度が低い理由として、利用頻度が低いのは価格が高いためで、補助金があれば利用頻度は上がると思われる。安い食材を利用するなどして、組み合わせてやりくりすれば、牛肉もさらに多く使えるのではなかろうかと本音を吐かれた。


本稿を作成するのにあたり、日本食肉消費総合センターの中村民夫氏、高知県学校給食会の各位、高知県地域農業推進課、高知県畜産振興課および高知県東津野給食センターの各位に深甚の謝辞を呈します。


				

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