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肉牛取引価格、過去最高水準で推移
乳牛のと畜割合が増加か
豪州統計局(ABS)によると、2016年5月の牛肉生産量は、20万4032トン(前年同月比10.9%減)と11カ月連続で前年同月を下回った。
同月の成牛と畜頭数は、71万9800頭(同13.2%減)となった(図4)。このうち雌牛の占める割合は、牛群再構築に伴い昨年10月以降、前年同月比で3ポイント程度低下して推移してきたが、5月は51.7%と、前年同月比1.3ポイントの低下にとどまった。これは、例年、4〜7月ごろにかけて乳牛のと畜が増加するが、今年は、大手乳業メーカーから酪農家に支払われる生産者乳価が引き下げられたことで、通常よりも乳牛の淘汰が増加したためとみられる。
肉牛取引価格、最高記録を更新
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年7月末日時点で1キログラム当たり674豪セント(546円:1豪ドル=81円)となった(図5)。同価格は5月から一段高く上昇しており、7月18日には同689豪セント(558円)と過去最高を更新し、その後わずかに下落するも、引き続き最高水準で推移している。こうした高値は、牛飼養頭数の減少により家畜市場での取引頭数が減少していることに加え、東部の主要肉牛生産地域で平年を上回る降雨予想から、牧草の良好な生育が見込まれ、牧草肥育業者と穀物肥育業者の間で肥育もと牛の導入をめぐる競争が強まっていることが影響しており、子牛生産者の収益性向上につながっている。
一方、食肉処理場にとっては厳しい経営環境となっている。肉牛取引価格の高騰で仕入れ価格の上昇が続く上、出荷牛の減少により通常の処理頭数を確保できないことから、食肉処理場の中には、稼働日数を減らしたり、従業員を削減する企業が出てきている。今後もしばらく処理頭数の増加は見込めないことから、地域経済への悪影響も懸念されている。
生体牛輸出、主要輸出先の減少により大幅に減少
MLAによると、2016年6月の肉用生体牛(肥育もと牛およびと畜場直行牛)の輸出頭数は、9万6879頭(前年同月比27.6%減)となった(表1)。また、2015/16年度(7月〜翌6月)としては、110万5360頭(前年度比13.6%減)と、過去最高であった前年度から一転して大幅に減少した。これは、最大の輸出先であるインドネシア向けが、56万6389頭(同23.5%減)と、大幅に減少したためである。
インドネシア向け輸出頭数は、同国が2015年1月からおおむね四半期ごとに輸入割当許可頭数を設定したことから、同頭数に左右されることとなった。豪州は、2015/16年度とほぼ同期間内に設定された輸入割当許可頭数の概ね9割程度を消化している。また、第2の輸出先であるベトナム向けについても、豪州の牛飼養頭数の減少による生体牛輸出価格の上昇に加え、前年度が大幅に伸びた反動もあり、かなり減少した。
ベトナム向けについては現在、ベトナムの一部の食肉処理場においてアニマルウェルフェアに反するような取扱いがあるという告発が豪州の動物福祉団体よりなされたため、一部の輸出業者がベトナムのいくつかの食肉処理場や肥育農場向けの輸出を停止しており、この問題が解決するまでは、一定の影響があると思われる。
(調査情報部 大塚 健太郎)