需給動向 海外

◆豪 州◆

生乳生産は減少も、乳製品輸出は好調


乳価引き下げを受け、5月以降の生乳生産が減少

デーリー・オーストラリア(DA)によると、2016年6月の生乳生産量は61万9900キロリットル(63万8500トン相当、前年同月比8.8%減)とやや減少した(図19)。5%以上の減少となるのは、同年5月に続いて2カ月連続であり、2015/16年度(7月~翌6月)最大の減少率となった。



2015/16年度の累計では953万9400キロリットル(982万5600トン相当、前年度比2.0%減)と、2012/13年度以来3年ぶりに前年度を下回った(図20)。



直近の減産の背景には、2016年4月から5月にかけて、乳業メーカー各社が生産者支払乳価を引き下げたことで、酪農家の生産意欲が減退し、早期乾乳や乳牛の淘汰などが進んだことがある。

豪州で第2位の集乳シェアを有する豪州フォンテラ社によると、同社の6月の集乳量は前年同月比25.9%減と大幅に減少し、2015/16年度の累計でも前年度比4.4%減と前年度を下回った。同社も5月に生産者支払乳価を引き下げている。

なお、生産者からの課徴金を事業原資の一部としているDAは、生乳生産量の減少に伴って課徴金収入が減少するとしており、今後、テレビ広告宣伝活動費を抑制するなど、一部事業を見直すとしている。

5月乳製品輸出、チーズ以外は大幅増

DAが公表した2016年5月の主な乳製品の輸出量は、以下の通りとなった(表7、図21)。





品目別に見ると、チーズ以外の品目は、前年同月比で大幅増となった。中でも増加率の大きかった脱脂粉乳は、EU産や米国産の輸出減少により、インドネシアやマレーシアといった東南アジアや中国向けが大幅に増加したとみられる。全粉乳は、中国向けが前年の反動で、また、バターは中東や東南アジアを中心とした需要の高まりを受け増加した。

一方、チーズについては、特に高級品の国内需要が高く、国内向け出荷が増加した分だけ減少したとみられる。

豪州最大手乳業メーカー、酪農家向け説明会を実施

豪州最大手で酪農協系乳業メーカーのマレーゴールバン(MG)社は7月17日、一連の生産者支払乳価引き下げの経緯について、傘下の酪農家向けに説明会を実施した。MG社は、生産者支払乳価の大幅な引き下げ(乳固形分1キログラム当たり5.60豪ドル(454円:1豪ドル=81円)から同4.75~5.00豪ドル(385~405円)へ1割以上引き下げ)を、異例ともいえる年度終盤の4月末に実施し、内外から批判の声が高まっていた。

MG社は、2016年4月末の乳価引き下げによって酪農家が納入先を他社に切り替えたことで、集乳量が13万キロリットル(3.6%)程度減少したものの、高付加価値乳製品の製造に優先的に生乳を配分していくため、業績への影響は小さいとしている。

現地報道によると、MG社の安い乳価を嫌って、生乳の納入先を他社に切り替えた酪農家はいるものの、他の乳業メーカーの集乳余力が大きくないことから、集乳シェアを一変させるような大規模な酪農家の離脱が起こる可能性は少ないとしている。

(調査情報部 竹谷 亮佑)


				

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