需給動向 海外

◆中 国◆

上半期の乳製品輸入は全般的に対前年増、飼料も堅調


粉乳の輸入量は減速

中国の粉乳類の輸入は、ニュージーランドとのFTAの影響で、年明けに先着順で優遇関税枠が消化されるため、毎年1月がピークとなる。2016年1月は、一昨年の過剰輸入による在庫処理のため大幅に輸入量が減少した2015年の反動から輸入が増加したが、2月以降の輸入は昨年並みの水準で推移している。

1月の輸入量増加の影響により、上半期(1〜6月期)の全粉乳の輸入量は、前年同期比20%増となったが、1〜4月期の同25%増からは5ポイント減少している。脱脂粉乳ではさらに顕著で、1〜4月期は同14%増であったのに対し上半期は同5%増と、9ポイントの減少となっている(図26)。



中国に輸入された全粉乳は、USDAによると、特殊用途向けに少量が受注生産されるわが国の状況とは大きく異なり、表10のとおり育児用調製粉乳(育粉)原料や還元乳など、その多くが飲用向けに加工される。

上半期の育粉等(HS 1901.10)の輸入量は前年同期比25%増の9.6万トン、同期の飲用乳(HS 0401.10及び 0401.20)の輸入量は同75%増の27.3万トンと好調で、国産乳製品が食品安全性の面で消費者から不信感を持たれている状況などを背景に、従来育粉や乳飲料等の原材料として輸入されていた全粉乳の需要が最終製品の輸入へ一定程度置き換わっている可能性が考えられる。



ホエイの輸入は年間40万トン前後で推移

一方、2011年以前はほとんど輸入実績の無かったホエイ(パウダー)の輸入量の伸びが顕著である。当初は飼料用として輸入を伸ばしたが、国産育粉の構成成分としてホエイが必要であるほか、最近では調製食品原料としての脱塩ホエイの需要も高まりつつあるといわれている。中国の輸入統計上、詳細分類は無いが、ホエイ(HS0404.10)の輸入量は2013年以降、安定的に40万トン台前半を維持しており、その約半数が米国産である(図27)。 



特に現時点で中国国内のチーズ生産が少ないため、ホエイが国内で生産されることは当面考えられないことから、今後、飼料用途の増加と、ホエイを利用する食品の生産量の増加に伴い、全粉乳や脱脂粉乳とともに国際乳製品需給への影響力が徐々に拡大すると考えられる。

輸入粗飼料の動向

また、酪農など養牛産業の大規模化の進展に伴い、ホエイ同様、以前はほとんど実績の無かった粗飼料の輸入が2008年ごろを境に急増し、国内の粗飼料不足を背景に2015年の粗飼料輸入量は136万トンまで増加している。2016年上半期の輸入は、前年同期比25%増の80万2000トンとなっている。

これを国別に見ると、最も多いのは米国産で、全体に占めるシェアは71%となっており、次いで豪州産が多く、同11%を占める。特筆すべきは、従来ほとんど輸入実績の無かったモンゴル産が急速に伸び、上半期ではシェアで9%の7.1万トンに達していることである。これは、モンゴルの天然牧草資源有効活用のための官民連携モデル事業として、両国間で2015年に合意した牧草の供給プロジェクト(投資総額5000万元(8億円:1元=16円))が開始されたことによるもので、今後、年間供給能力20万トンを目指すとされている(図28)。



また、このほか、アルファルファのキューブ・ペレット(HS 1214.10)が毎年2万トン強輸入されており、価格優位性などの理由でそのほとんどがスペイン産となっている。

(調査情報部 木田 秀一郎)


				

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