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生乳生産増により乳価は今年最安値を更新
生乳出荷量は14カ月連続前年同月超
欧州委員会によると、2016年5月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比0.8%増の1413万トンとなった(図17)。出荷量は、14カ月連続で前年同月を上回ったが、乳価低迷などを受けて増加率は縮小傾向にある。
主要出荷国では、EU第4位の出荷量のオランダが同8.3%増、7位のアイルランドが同4.9%増となる一方、2位のフランスが同1.8%減、3位の英国が同4.8%減となるなど、加盟国間で差が生じる結果となった。なお、1位のドイツは同1.1%増と前年並みであった。
2016年1〜5月までの累計では、オランダ(前年同期比14.3%増)とアイルランド(同11.1%増)の増加量が多く、EU全体では前年同期比4.5%増となっている。
生乳取引価格は22カ月連続前年同月割れ
欧州委員会によると、2016年6月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比14.4%安の100キログラム当たり25.81ユーロ(1キログラム当たり30.20円:1ユーロ=117円)と、今年の最安値を更新した(図18)。同価格は、生乳出荷量が前年同月を上回って推移する中、乳製品国際相場の低迷も相まって、22カ月連続で前年同月を下回っている。同価格が25ユーロ台まで落ち込んだのは、EUの酪農危機と言われた2009年8月以来およそ7年ぶりとなる。
欧州委員会が新たな5億ユーロの支援策を公表
このような中、欧州委員会は2016年7月18日、生産者への5億ユーロ(585億円)の新たな支援策を公表した。これは、昨年9月の支援策および本年3月の追加支援策に続く追加の支援となる。
支援策の主な概要は、生乳の供給過多に対応し、EU全域にわたって市場への生乳の供給量を減らすため、2016年10月1日から12月31日の間に前年同期と比較して削減した生乳出荷量に応じて生産者に補助する「生乳出荷削減奨励金」に1億5000万ユーロ(175億5000万円)、加盟国が自国の状況に合わせて欧州委員会が提示する事業の中から選択して実施する「加盟国の裁量による支援」に3億5000万ユーロ(409億5000万円)となっている。後者については、酪農に限らず他の畜種も対象にできる。
その他の支援策は、脱脂粉乳の公的買入や民間在庫補助(PSA)の実施期間の延長や、キャッシュフロー対策として直接払いの前払いなどとなっている。
欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当欧州委員は、「厳しい予算の制約がある中、この予算を確保した。我々の目標は、価格が回復することであり、生産者の経営が生産物の対価で成り立ち、安全で高品質な食品を市民に提供し、農村地域と雇用への貢献そして公共財の供給という貢献をすることである。」と語った。
なお、支援策の具体的な内容については引き続き検討され、関連規則は9月中旬に整備される予定である。
(調査情報部 大内田 一弘)