需給動向 海外

◆ブラジル◆

2016年の鶏肉輸出量、過去最高をわずかに更新


中国向けは大幅増

ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2016年の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年比1.8%増の395万9394トン(製品重量ベース)と前年に記録した過去最高をわずかながら更新した(表6)。ただし、上半期(1〜6月)がレアル安米ドル高の為替相場が追い風となり前年同期比14.7%増の206万93トンと好調に推移した一方、下半期(7〜12月)は、同9.2%減の189万9301トンとかなりの程度減少したため、通年ではわずかな増加にとどまった。4月以降トウモロコシの不作に伴う飼料コスト高からパッカーの収益性が悪化し、6月以降減産調整や中小鶏肉企業の倒産が報じられるなど下半期の輸出に悪影響が生じる結果となった(図12)。

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輸出先別の内訳を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは、同国内での鶏肉生産の拡大などに伴い、わずかに減少した。一方、第2位の中国向けは、同国が鳥インフルエンザが発生した米国からの鶏肉および種鶏の輸入を停止したことから代替需要として引き合いが大幅に強まった。また、第3位の日本向けは、同内で牛肉および豚肉が高値で推移する中、安価な輸入鶏肉の需要が高まったものの、輸入品在庫が記録的な水準にあったことや下半期にレアル高基調で推移したことから前年比6.1%の減少となった。

ブロイラー生産コスト高は緩和基調

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の養鶏・養豚調査センター(CIAS)が毎月公表している最大生産州パラナ州のブロイラー生産コスト指数を見る限り、同国におけるブロイラーの生産コストの約7割を占める飼料の主原料であるトウモロコシの価格が一服したため、16年7月以降低下基調で推移している(図13)。

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しかしながら、2016年の飼料用トウモロコシ(HSコード:1005.90)の輸入量は、前年比7.8倍の290万1157トンと過去最高を更新したほか、2017年1月も45万トンに達するなど、不作に伴う飼料用トウモロコシの不足分は、近隣のパラグアイやアルゼンチンからの輸入が続いている。このため、2016/17年度(10月〜翌9月)の第1期作トウモロコシの流通が本格化する2〜3月以降、生産コスト指数がどのように推移するか関係者の関心が高まっている。

2017年の鶏肉生産・輸出は過去最高の見込み

米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が2016年10月に発表した「Livestock and Poultry:World Markets and Trade」によると、ブラジルの2017年の鶏肉生産量は前年比3.5%増の1408万トン(可食処理ベース)、鶏肉輸出量は同6.7%増の438万5000トン(同)といずれも過去最高が見込まれている。

輸出先のうち、伸び幅が著しい中国向けは、2016年9月23日以降ブラジルの5つの処理・加工場の輸出認定が暫定的に取り消されたことなどを受けて大きく減少した。同年12月16日には2工場が再認定されたものの、以降の同国向け輸出量は一時期の勢いを失っている状況にある(表7、図14)。

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また、2017年に輸出拡大が見込める市場としては、対米関係悪化で南米との関係強化を模索しているメキシコが挙げられている。メキシコは2015年11月、ブラジル国内の鶏肉輸出認定施設を16カ所追加して21カ所に増やして以降、加速的にブラジルからの輸入量を増やしている。

(調査情報部 米元 健太)


				

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