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2016/17年度の生乳生産、21年ぶりの低水準となる可能性
デーリー・オーストラリア(DA)が2017年2月に公表した最新の見通しによると、2016/17年度(7月〜翌6月)の生乳生産量は、1995/96年度以来21年度ぶりに、900万キロリットルを割り込む可能性がある。
これは、前年度の生産者乳価引き下げによる生産意欲の低下の影響を引きずっているためとされている。年度当初の潤沢な降雨を受け、かんがい用水や乾草、飼料の調達コストはおおむね前年度よりも低水準となったが、生産の回復にはまだつながっていない。
DAは、乳製品国際価格は需要増を受け回復傾向にあるものの、集乳量の減少により乳業メーカーの工場稼働率が低下していることから、乳業メーカーの収支、ひいては酪農家の生産マージンが上向きに推移してくるまでには、まだ相応の時間を要するとしている。
DAが発表した、2016年12月の乳製品の主要4品目の輸出量は、以下の通りとなった(表12、図23)。
主要4品目のうち、チーズは、韓国向けやマレーシア向けの増加により、前年同月をわずかに上回った。
一方、脱脂粉乳は、インドネシアやベトナム向けが大幅に減少したことで、バターは、ペルーやメキシコなど南米向けが大幅に減少したことで、ともに前年同月を大幅に下回った。このところ好調を維持していた全粉乳は、シンガポール向けが前年同月から4割近く減少したことで、わずかに前年同月を下回った。
現地専門家は、中国からの需要の高まりを受け、最近の乳製品生産は、脱脂粉乳やバターから全粉乳にシフトする傾向がみられるとしている。
2017年2月21日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通り、バターはわずかに上昇したものの、それ以外はわずかに下落した(表13、図24)。
天候の回復などにより、ニュージーランドの生乳生産見通しがわずかに上方修正されたことに加え、全粉乳の入札数量が前回比5%程度増加したことが、価格下落の要因とみられる。
しかし、需要面を見ると、主要な輸入国である中国の需要が、2017年に入ってから回復基調にあることから、業界関係者の間では、今回のGDTの下落についても、一時的なものとして楽観視する向きが強い。
ラボバンク社は、世界的な供給減と中国の需要回復により、国際価格が上昇基調にあることを受け、2017/18年度の生産者乳価について、乳固形分1キログラム当たり5.95豪ドル(524円:1豪ドル=88円)程度まで上昇するとの見通しを示している。豪州最大手乳業であるマレーゴールバン社が示している最新の乳価(同4.92豪ドル(433円))よりも2割以上高い設定となる。現地報道によると、他の専門家の間でも、ロシアの禁輸政策や為替相場の動向にもよるが、同6豪ドル(528円)近くまで回復するとの楽観的な見通しが広がっている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)