需給動向 海外 |
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生産量は微増、豚価は引き続き高値で推移
欧州委員会によると、2016年11月の豚枝肉生産量(EU28カ国)は、前年同月比0.5%増の200万トンとなった(図8)。
加盟国別に見ると、EU最大の生産国であるドイツ(シェア25%)が同3.3%増、第2位のスペイン(同18%)が同1.3%増となった。主要国の中で最大の減少となったのはデンマーク(同6%)で、同15.7%減となった。
2016年1〜11月のEU全体の累計では、前年同期比1.0%増と前年をわずかに上回った(表4)。最大の増加量となったのはスペインで、同5.6%増(前年同期比20万トン増)となった。一方、デンマークはドイツなどへの子豚出荷の割合が増加したため最大の減少量となり、同5.0%減(同7万トン減)となった。
欧州委員会によると、2016年12月の豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、前年同月比21.3%高の100キログラム当たり153.09ユーロ(1万8677円:1ユーロ=122円)となった(図9)。
中国向けの輸出需要などにより好調に推移している同価格は、6月から7カ月連続で前年を上回った。
世界貿易機関(WTO)の上級委員会は2月23日、ロシアが欧州連合(EU)からの生体豚、豚肉、その他の豚肉製品に講じている禁輸措置をWTO協定違反と認定した。ロシアは、2014年1月にリトアニアでアフリカ豚コレラ(ASF)の発生が確認されたことを受けて、EU産の豚肉製品に対して禁輸措置を講じている。
WTO加盟国は、自国の適切な衛生基準により疾病リスク対策を講じつつ、衛生問題を理由に禁輸措置を取ることができるが、ASFの発生を理由にロシアが講じた措置の妥当性は認められなかったことになる。
欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当欧州委員は、ロシアに対して、国際通商ルールを守り、ASFフリーの地域を禁輸措置の対象としない地域主義の原則の順守を促すものであると、今回の上級委員会の認定を歓迎した。
この上級委員会の報告がWTOの紛争解決機関で採択されると、ロシアはその禁輸措置を廃止するか是正を講じなければならない。早急な是正措置ができない事情がある場合には、履行のための「妥当な期間」が与えられる。
ただし、禁輸措置の対象となっている多くの産品は、2014年8月6日の政治的な意図により講じられた農産物・食品の禁輸措置によって禁輸が継続される。豚脂、内臓、生体豚については、この政治的な意図による禁輸措置の対象とはなっていないが、「妥当な期間」が与えられることにより当面は解除されないものとみられている。
(調査情報部 大内田 一弘)