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2017/18年度の生乳生産量は2〜3%増加の見込み
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2017年5月の生乳生産量は、66万2500キロリットル(68万2400トン相当、前年同月比2.8%減)と前年同月をわずかに下回った(図19)。2016/17年度(7月〜翌6月)の5月までの累計生乳生産量は、836万2000キロリットル(861万2900トン相当、前年同期比7.6%減)となり、DAは、同年度の生乳生産量が21年度ぶりに900万キロリットル台を割り込む公算が高いとしている。
DAは、最新の見通しで、2017/18年度(以下「新年度」という)の生乳生産量は、かんがい用水や乾草、肥料といった生産資材の安値基調が続いていることや、好天が見込まれること、中国や東南アジアを中心とした旺盛な海外需要により国際市況が回復傾向で推移していることから乳価の上昇が期待されることに加え、クリームやバターを中心とした国内の乳製品需要高を受け、前年度比で2〜3%程度増加するとしている。また、オランダの農業系金融機関のラボバンクも、同様の理由から3%の増産を見込んでいる。
その一方で、DAが1000戸の酪農家を対象として2〜3月に実施したアンケートによると、経営見通しが明るいと回答した者の割合は53%(前年比14ポイント減)となり、1年前に調査したときの割合から減少した。また、経営規模について、拡大を検討していると回答した者の割合は16%(同14ポイント減)、これに現状維持と回答した者を加えた合計でも56%(同33ポイント減)となった。
DAが発表した、2017年4月の乳製品の主要4品目の輸出量は、前月に引き続き、チーズ以外は前年同月を大幅に下回った(表10、図20)。
主要4品目のうち、脱脂粉乳は、バングラデシュやマレーシア、サウジアラビア向けが一時的な需要の低下により減少したことから、全粉乳は、バングラデシュ、シンガポール向けが、それぞれニュージーランド(NZ)産やEU産への切り替えにより減少したことから、また、バターは、台湾向けがEU産への切り替えにより減少したことから、いずれも前年同月を大幅に下回った。
一方、チーズは、国際相場が堅調に推移する中、増加傾向にある。日本向けについては、NZ産やEU産への切り替えなどにより減少した一方、中国や韓国向けについては、需要の高まりを受けていずれも増加したため、前年同月をやや上回った。
2017年6月20日に開催された、乳製品取引価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、全粉乳とチーズで前回を下回る結果となった(表11、図21)。
現地報道によると、今回の全粉乳価格の下落は、入札数量の増加によるもので、あくまでも一時的なものとしている。また、チーズの下落についても、これまでと比較して十分高い価格であるとして、市場関係者の間には安心感が広まっている。一方、上昇を続けるバターについては、乳脂肪分に対する世界的な需要増を反映したものであるとしている。
7月から始まる新年度を前に、主要乳業メーカーの新年度当初乳価が出そろった(表12)。乳製品国際価格が回復基調にある中、各社とも前年度の最終乳価から引き上げた。
このうち、最大手のマレーゴールバン(MG)社は6月7日、他社に先駆けて乳固形分1キログラム当たり4.7豪ドル(414円:1豪ドル=88円)と発表した。
しかし、競合する乳業メーカー各社は、主産地であるビクトリア州での集乳量を増やすべく、これよりも高い乳価を提示したことから、MG社は6月22日、酪農家の減少を食い止め、集乳量を確保するため、乳価の引き上げ(同5.2豪ドル(458円))を発表した。
現地専門家によると、MG社傘下の酪農家の多くは、今回の引き上げ後もなお競合他社より乳価が低いことに対して批判を強めており、今後も他社へ生乳供給契約を切り替える動きが続く可能性があるとしている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)