需給動向 海外

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生乳出荷量、乳価回復を受け2カ月連続で前年超え


ポーランド、アイルランドなどで増産

欧州委員会によると、2017年4月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比0.4%増の1359万トンとなった(図16)。2016年の下半期以降、生乳取引価格の低迷などにより長らく減産傾向にあったが、乳価が上昇に転じたことなどから、前月に続いて増産となった。

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加盟国別に見ると、EU最大の生乳出荷国であるドイツ(同3.2%減)、第2位のフランス(同1.0%減)などで減産が見られた一方、ポーランド(同4.1%増)、アイルランド(同12.1%増)などが増産となった(表8)。

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2017年1〜4月の累計では、前年同期比1.4%減となっている。

乳価は半年間、33ユーロ前後で推移

欧州委員会によると、2017年5月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比25.1%高の100キログラム当たり32.79ユーロ(1キログラム当たり42.30円:1ユーロ=129円)となった(図17)。

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乳価は、7カ月連続で前年を上回って推移しており、2017年に入ってからは同33ユーロ前後で安定して推移している。バターやチーズの輸出需要の増加など上げ要因があるものの、生乳出荷量が回復傾向にあること、緊急支援策として介入買い入れされた脱脂粉乳公的在庫がEU年間生産量の3分の1に相当する35万トンあることなどが、上昇を阻害していると考えられる。

脱脂粉乳公的在庫の売渡入札、半年ぶりに落札

欧州委員会は、6月20日に脱脂粉乳公的在庫の10回目の売渡入札を実施し、100トンを落札とし、売り渡した(表9)。これまで実施した10回のうち2回目から9回目までは全量不落となっており、半年ぶりの落札となった。

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応札数量は、ベルギーとポーランドの企業による計1340トンとなり、前回、前々回(ともに240トン)から5倍以上に増えた。

売渡最低価格は、100キログラム当たり185.00ユーロ(2万3865円)となり、これまでの唯一の落札である1回目(215.10ユーロ(2万7748円))から14.0%低いものとなった。

欧州委員会は、これについて、入札時点のEU平均卸売価格より7%程度安いものの、公的買入価格(169.80ユーロ(2万1904円))より9.0%高い価格であり、製造後2年経っていることから「理解できるもの」と説明した(図18)。なお、落札は全量ベルギーの企業である。

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売渡入札は、公的在庫が35万トンに達した中、生産者団体から、価格が十分に回復しておらず時期尚早であるとの批判を受けながらのスタートであった。欧州委員会は、売渡入札開始後にも公的在庫が積み増される中、一連の売渡入札の目的は在庫の削減ではなく、あくまで需給バランスの均衡と価格の回復であるとし、これまでは売渡最低価格を安易には引き下げず、今回の落札価格を上回る価格での応札も不落としていた。

今回の入札で4カ月ぶりに公的買入価格を上回る応札があったことや欧州委員会が売渡最低価格を引き下げたこと、また、最近の脱脂粉乳価格の上昇などが次回以降の入札に影響を与えることは間違いなく、当該在庫に対する業界の関心は高い。

(調査情報部 大内田 一弘)


				

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