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生乳は減産傾向にあり、乳価は30ユーロ台まで回復
生乳出荷量の減少幅が拡大
欧州委員会によると、2016年10月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比3.5%減の1201万トンとなり、2016年最大の減少幅を前月に続き更新した(図19)。
加盟国別に見ると、EU最大の生乳出荷国であるドイツ(シェア21%)が同3.7%減、第2位のフランス(同16%)が同7.7%減、第3位の英国(同10%)が同6.1%減となった。10月から生乳出荷削減奨励事業が実施されており、アイルランドなどこれまで増産傾向にあった主要国を中心に減産の傾向が強まる中、第4位のオランダ(同10%)は、同2.0%増とわずかだが増産を維持した。
2016年1〜10月のEU全体の累計では、前年同期比1.3%増となっており、2016年通年では前年比0.6%増と見込まれている。
乳価は約1年ぶりの30ユーロ台へ
欧州委員会によると、平均生乳取引価格(EU28カ国)は、生乳出荷量の減少などにより、2016年8月以降4カ月連続の上昇となり、11月は、前月比5.7%高、前年同月比2.2%高の100キログラム当たり31.63ユーロ(1キログラム当たり39.22円:1ユーロ=124円)となった(図20)。
同価格が30ユーロ台まで回復したのは2015年12月以来11カ月ぶりであり、前年同月を上回ったのは2014年8月以来27カ月ぶりとなる。
脱脂粉乳公的在庫の売渡入札が開始
欧州委員会は2016年12月13日、脱脂粉乳公的在庫の売渡入札を開始した。入札対象は、2015年7月から2016年9月9日までに各国政府に買い入れられた累計35万4000トンのうち2015年11月1日までに買い入れられた2万2000トンであり、公的在庫量全体の6%となっている。欧州委員会のホーガン農業担当欧州委員は、公的在庫の放出にあたっては、回復の兆しの見えた脱脂粉乳の価格を阻害しないように市場を注視していくとしており、2万2000トンが全て売却されるまで、毎月第1・第3火曜日に入札が実施される予定である。
1回目(12月13日)の入札は、脱脂粉乳の価格に回復の兆しは見られるものの不安定さがあることから、在庫の一部を放出して様子を見ることとして、欧州委員会が売渡最低価格を100キログラム当たり215.10ユーロ(2万6672円)に設定し、実施された。1万9707トンの応札があったものの、同価格が、回復傾向にあるEU平均卸売価格(入札直前の12月5日の週:前年同期比16%高の同201ユーロ(2万4924円))を上回る水準であったこともあり、結果として40トンの落札にとどまった。
2回目(1月3日)の入札は、1万1900トンの応札があり、売渡最低価格は設定されなかったものの、入札価格が低かったことから、落札対象はゼロとなった。
需給バランスの均衡と価格の回復が目的とされる入札に対する欧州委員会の今後の判断については、業界から注目が集まっている。
(調査情報部 大内田 一弘)