需給動向 国内 |
推定期末在庫、17カ月ぶりに前年同月を上回る |
平成28年11月の豚肉需給を見ると、生産量は、8万28トン(前年同月比3.3%増)と前年同月をやや上回った。輸入量は冷蔵品、冷凍品ともに前年同月を上回り、7万6319トン(同16.4%増)と前年同月を大幅に上回った。推定出回り量は前年同月をやや上回る15万5471トン(同5.5%増)となり、推定期末在庫は前月から550トン積み増し、16万4236トン(同3.1%増)と、17カ月ぶりに前年同月をやや上回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
11月の豚肉輸入量、前年より16.4%増加
平成28年11月の冷蔵品輸入量は、3万118トン(前年同月比5.6%増)と前年同月をやや上回った(図2)。主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は、米国産とカナダ産が9割以上を占めており、これら2カ国の需給動向によって輸入量が変動することが多い。米国の豚肉生産は、豚流行性下痢(PED)の影響から回復し、28年9月1日時点の飼養頭数が過去最高となるなど増加基調となっている。そのため、現地相場安が続いており、輸入業者にとって買い付けがしやすい環境になっていると思われる。また、日本国内では、牛肉の小売価格上昇に伴う豚肉への需要シフトが進み、量販店での輸入品の特売需要なども、冷蔵品輸入量の増加要因となっているものとみられる。
ハム、ソーセージなどの加工原料用として使用されることが多い冷凍品は、年末の贈答用などの加工原料としての手当てもあり4万6201トン(同24.6%増)と前年同月を大幅に上回った。国別に見ると、北米が減少している一方で、デンマークやスペインなどEUからの輸入が増加している。ロシアの禁輸問題に伴いEU各国からの輸入が増加しており、デンマーク以外の需要も定着しつつあるため、今後も一定程度の量が輸入されるものと予想される。
こうしたことから、27年7月以降、前年同月を下回って推移していた推定期末在庫は、在庫水準は高くないものの16万4236トン(同3.1%増)と17カ月ぶりに前年同月を上回った。
29年度豚肉安定基準価格、5円引き下げ440円に
平成28年12月16日に開催された「食料・農業・農村政策審議会畜産部会」において、畜産物価格等の算定について諮問・答申が行われ、29年度の畜産物価格等が決定した。豚肉の安定価格については、安定上位価格が現行1キログラム当たり600円から595円に、安定基準価格は現行同445円から440円と、それぞれ5円引き下げられた(表3)。
これは、飼料費を中心とした推定生産費が、過去5年間の平均に対して減少する見込みとなったことによるものである。
(畜産需給部 小林 智也)