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フィードロット飼養頭数、3年ぶりに80万頭を下回る
9月の牛肉生産量、大幅に減少
豪州統計局(ABS)によると、2016年9月の成牛と畜頭数は、牛飼養頭数の減少と牛群再構築に伴う雌牛の保留により、55万5400頭(前年同月比25.0%減)と大幅に減少した。と畜頭数の減少により、同月の牛肉生産量(子牛肉を除く)は、15万8284トン(同23.2%減)と15カ月連続で前年同月を下回った(図5)。
州別に牛肉生産量を見ると、生産量が最も多いクイーンズランド州は、8万5712トン(同17.1%減)と減少幅は全体より小さい一方、続くニューサウスウェールズ州は2万9820トン(同33.6%減)、ビクトリア州は2万2615トン(同31.2%減)と全体より大きく減少している。これは、9月に一部の地域で洪水が発生するほどの降雨に見舞われ、道路の分断などにより牛の出荷が一時停滞したことも影響しているとみられる。
肉牛取引価格、前月に続き下落
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、8月に過去最高を記録して以降概ね横ばい傾向で推移したが、10月に入ってからは下落傾向で推移しており、11月末時点では、同642豪セント(552円:1豪ドル=86円)と、8月の最も高かった時と比べて、84豪セント(72円)低下した(図6)。
例年、10、11月ごろは季節的に取引頭数が増加して肉牛取引価格が一時的に下落する傾向があり、2016年においてもこれまで過去最高水準で推移した同価格が落ち着きを見せたものとみられる。
と畜頭数に占める穀物肥育牛の割合が増加
豪州フィードロット協会(ALFA)とMLAによると、2016年9月末のフィードロット飼養頭数は、78万8873頭(前年同月比17.9%減)と大幅に減少し、3年ぶりに80万頭を下回った。豪州では、肉牛飼養頭数の減少に伴い肉牛取引価格が高騰しており、肥育もと牛の価格も上昇していることから、多くのフィードロットが導入を控えているとしている。
また、穀物肥育牛の2016年7〜9月のと畜頭数は、フィードロット飼養頭数の減少に伴い、67万105頭(前年同期比14.7%減)と大幅に減少したものの、牧草肥育牛のと畜頭数の減少幅の方が大きいため、と畜頭数に占める穀物肥育牛の割合は38.8%と、直近5年間では最高となった(図7)。
生体牛輸出、インドネシア向けの減少により前年同月比6割減
MLAによると、2016年10月の肉用生体牛(肥育もと牛およびと畜場直行牛)の輸出頭数は、4万4834頭(前年同月比63.0%減)と前年同月の4割程度まで減少した(表1)。2016年1〜10月の累計においても、78万7440頭(前年同期比28.7%減)と大幅に減少している。
これは、牛飼養頭数の減少や牛群再構築による雌牛の保留により生体輸出に仕向けられる頭数が減少していることに加え、生体牛取引価格の上昇により1頭当たりの輸出価格も上昇していることから、輸出先国が買い控えているためとみられる。
特に、最大の輸出先であるインドネシア向けは、同国がおおむね四半期ごとに設定している輸入割当許可頭数の9月以降の設定が遅れたことに加え、同国政府が、生体牛の輸入に際して肉用牛5頭につき繁殖用1頭を輸入するという新たな方針を定めたことで、インドネシアの輸入業者がその対応に時間を要していることも、輸出頭数減少の大きな要因とみられる。
(調査情報部 大塚 健太郎)