需給動向 国内

◆牛 肉◆

牛肉の家計消費、購入数量の増加続く


平成28年10月の牛肉需給を見ると、生産量は2万7186トン(前年同月比5.8%減)と前年同月をやや下回った。品種別では、和牛が1万1658トン(同10.6%減)、乳用種が8451トン(同6.9%減)と減少した。交雑種は酪農家における乳用種への黒毛和種交配率の上昇により、6715トン(同4.8%増)と4カ月連続で前年同月を上回った。

輸入量は、冷蔵品が1万7489トン(同7.7%減)、冷凍品が2万3738トン(同5.7%増)となり、合計で4万1249トン(同0.7%減)と前年同月をわずかに下回った。国別に見ると、最大のシェアを占める豪州産は、出荷頭数の減少により2万1455トン(同15.5%減)とかなり大きく減少した。一方で、出荷頭数の回復に伴い生体価格が低下している米国産は1万6139トン(同21.5%増)と大幅に増加しており、豪州産から割安な米国産へのシフトが続いている。

推定出回り量は前年同月をやや上回る7万6746トン(同5.9%増)となり、推定期末在庫は前月から8542トンを取り崩し、11万6319トン(同17.5%減)と10カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

和牛枝肉卸売価格、年末に向けて続伸

東京市場における平成28年11月の牛枝肉卸売価格(速報値)を見ると、交雑種や乳用種が下位等級を中心に弱含みの展開となる中、年末に向けて贈答用や鍋需要が高まる和牛は、去勢A−5が1キログラム当たり2908円(前年同月比5.9%高)、去勢A−4が同2651円(同2.8%高)と、記録的な高値となった前年を上回った(図1)。和牛相場は、28年4月に過去最高値を記録して以降、高値疲れによる他の国産牛肉や豚肉などへのシフトにより鈍化していた。しかしながら、全国的な出荷頭数の減少のほか、インバウンド需要の増大、堅調な輸出なども下支えとなっているものとみられ、最高値に迫る水準で推移している。

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牛肉購入数量、5カ月連続で前年同月を上回る

このような状況の中、牛肉消費の約6割を占める外食など(家計消費および加工仕向け以外の消費)は、堅調に推移している。(一社)日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、外食全体の売上高は、台風の影響などで客数が減少した平成28年8月を除き、前年同月を上回って推移し、10月は前年同月比5.3%増となった。特に、焼肉店や牛丼店を含むファストフード和風の好調がけん引しているものとみられる。

また、総務省の「家計調査報告」によると、10月の全国一人当たりの牛肉購入数量は176グラム(前年同月比7.6%増)と5カ月連続で前年を上回った(図2)。牛肉消費の約3割を占める家計消費については、小売価格上昇に伴う豚肉などへのシフトにより減少が続いていたが、28年2月に増加に転じて以降、5月を除き前年同月を上回る好調が続いている。

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10月の推定出回り量を見ると、国産品は2万6704トン(同6.9%減)、輸入品は5万42トン(同14.3%増)となった。27年12月以降、前年同月比2ケタ増が続く米国産冷蔵品輸入量の増加が、外食や家計消費における牛肉消費の増加につながっているものと思われる。

当機構が行っている食肉の販売動向調査結果(注)においても、量販店における28年度下半期の牛肉販売見通しについて、和牛が「減少」すると回答した者が57%、輸入牛肉が「増加」すると回答した者が75%を占めており、仕入価格上昇分の価格転嫁が難しい国産牛肉から、輸入牛肉の販売にシフトする小売業者が多いことがうかがえる。

(注) 「食肉の販売動向調査」とは、当機構が年に2回実施している卸売業者および小売業者を対象とした食肉の取り扱いや販売見通しに関するアンケート調査。なお、本アンケート調査の全文は当機構ホームページに掲載している。(https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000060.html

(畜産需給部 二又 志保)


				

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