需給動向 海外 |
◆ブラジル◆
1〜9月の鶏肉輸出量、前年比6.2%増 |
レアル安の為替相場が後押し
ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2016年1〜9月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比6.2%増の306万3730トン(製品重量ベース)と過去最高を記録した(表3)。当初は為替相場がレアル安米ドル高基調で好調に推移した一方、4月以降トウモロコシの減産に伴う需給逼迫傾向が深刻化して収益性が悪化した結果、6月以降減産調整や中小鶏肉企業の倒産が報じられ輸出にも影響が生じた(図16)。このため、7〜9月の同輸出量は、前年同期比7.7%減の100万3611トンとかなりの程度減少した。
輸出先別の内訳を見ると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは、同国内で鶏肉生産の拡大に伴い、わずかに減少した。第2位の中国向けは、米国での鳥インフルエンザ発生以降、同国からの鶏肉および種鶏の輸入を停止しており、旺盛な需要を賄うべくブラジル産の引き合いが大幅に強まった。また、第3位の日本向けは、日本国内で牛肉が高値で推移する中、安価な輸入鶏肉需要が高まったが、輸入鶏肉在庫が記録的な水準で積み増されたため、同3.8%の増加にとどまった。
依然としてコスト高は続く
ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の養鶏・養豚調査センター(CIAS)が毎月公表しているブロイラー生産コスト指数によると、主産地パラナ州のブロイラー生産費は、飼料の主原料であるトウモロコシ価格が一服したため低下基調で推移している(図17)。
しかしながら、飼料用トウモロコシの不足分については、近隣のパラグアイやアルゼンチンから輸入するケースが増えたため、例年と比べると依然としてコスト高の生産環境が続いている。2016年1〜10月の飼料用トウモロコシ輸入量は、前年同期比7倍の191万3600トンと、過去最高の年間輸入量を既に更新している。
過去最高見込みも下方修正される可能性
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が10月に発表した「Livestock and Poultry:World Markets and Trade」によると、ブラジルの2016年の鶏肉生産量は前年比3.5%増の1360万5000トン(可食処理ベース)、鶏肉輸出量は同7.0%増の411万トン(同)といずれも過去最高が見込まれている。
こうした中、ブラジル動物性たんぱく質協会(ABPA)は11月4日、2016年10月のブラジルの冷蔵・冷凍鶏肉輸出量が前月から大きく落ち込んだことを発表した。背景には、中国が9月23日以降、ブラジルの5つの処理・加工場の輸出認定を暫定的に取り消したことが挙げられ、今後の輸出への影響が懸念されている(表4)。
(調査情報部 米元 健太)
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