需給動向 海外 |
育粉製造規則の変更により業界再編が進展
国内生乳価格は春節に向けて上昇の兆し
中国農業部の公表する主要生産省・自治区の11月第2週までの生乳の平均農場出荷価格は、1キログラム当たり3.46元(57円:1元=16.58円)と2014年のピーク時に比べると引き続き低い水準で推移している(図28)。ただし、現地報道によると、天津市など一部地域では同3.8元(63円)、品質の良いものであれば4元(66円)程度まで上昇している事例も見られるとされている。
現在、国内の生乳生産においては、低迷する乳価の影響により頭数の減少や小規模酪農家の廃業などが進み、供給力が低下している。このような中、これから年明けの春節に向けて、帰省時の贈答用などで飲用乳やヨーグルトを中心に需要が増大するため、生乳価格は一定の上昇が見込まれる。
直近の原料向け乳製品輸入は季節的要因により低調
食品原料となる粉乳類の輸入は、季節的要因によりオセアニア産を中心に低調で推移している。2016年1〜10月の輸入状況を見ると、全粉乳は前年同期比18%増の36万トンであるが、9月以降の輸入量は伸びていない。脱脂粉乳は同7%減の16万トンと、減少幅が拡大している。オセアニア地域とのFTAによる減税措置が毎年年明けから先着順で適用されるため、年内の輸入は引き続き低調と見られる(図29)。
10月からの改正育粉規則の実施により業界再編が加速
原料向け乳製品の輸入が季節要因により低迷する一方、そのほかの乳製品の輸入は概ね堅調である。特に、育児用調製粉乳(育粉)の輸入は好調で、2016年1〜10月の輸入量は前年同期比27%増の17万トンとなっている。供給国別で見ると、近年育粉の輸出余力を高めているオランダ、アイルランドのほか、ニュージーランドからの輸入が好調に推移している(図30)。
また、米国が主要な調達先であるホエイ類の輸入も堅調である(図31)。ホエイ類は、育粉の原料としても利用されることから、一人っ子政策の廃止などにより、輸入品だけでなく国産需要も増加しているもようである。
なお、中国では2016年6月に育粉のブランド規制に関する規則が公表され、10月1日から施行された。製品の成分配合について従来よりも厳格に審査されることとなっており、これらの規制に対応するための製品開発・品質管理能力の低い中小育粉メーカーには厳しい状況であることから、現地報道によると10月以降、輸入ブランドも含めて相当数のマイナーブランドが淘汰されつつあるとされている。
(調査情報部 木田 秀一郎)