需給動向 海外

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欧州委員会が脱脂粉乳の公的在庫の放出を決定


生乳出荷量は今年最大の減少

欧州委員会によると、2016年9月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比2.6%減の1187万トンと、今年最大の減少幅となった(図21)。

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加盟国別に見ると、EU最大の生乳出荷国であるドイツが同3.0%減、第2位のフランスが同7.3%減となっており、EU全体の4割の出荷量を誇る両国で、いずれも今年最大の減少幅となっている。2016年10月から生乳出荷削減奨励事業が実施されたことなどにより、この傾向はしばらく続くとみられている。

乳価は低水準ながらも上昇傾向

欧州委員会によると、2016年10月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比3.0%安の100キログラム当たり29.81ユーロ(1キログラム当たり36.67円:1ユーロ=123円)となった(図22)。

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同価格は、前月から7.3%高となり、3カ月連続の上昇となった。生乳出荷量の減少を受け、低水準ながらも上昇傾向にある。

欧州委員会、脱脂粉乳の公的在庫放出を発表

欧州委員会は11月24日、ロシアの禁輸以降、低迷した市況改善を目的に行った脱脂粉乳の公的買い入れによる在庫の一部を放出する計画を公表した。

脱脂粉乳については、2015年7月から2016年9月までに行われた公的買い入れにより、脱脂粉乳の年間生産量の3分の1に相当する35万5000トンの公的在庫を抱えていたが、卸売価格が公的買入価格(100キログラム当たり169.80ユーロ(2万885円))を上回るなど改善の兆しが見られる中、新たな買い入れがないことから、欧州委員会は、放出のタイミングを見計らっていた。

こうした中、欧州委員会は、脱脂粉乳の卸売価格が、11月14日の週に5月上旬に記録した底値(同162.48ユーロ(1万9985円))を22%上回る同198.08ユーロ(2万4364円)になるなど、公的買入価格を2割近く上回る状況が8週にわたって続いていることから、放出を決断した。

欧州委員会は、脱脂粉乳の市況は、改善の兆しが見られるものの先行きに不透明感もあるとして、まずは公的在庫の6%に相当する2万2150トンを放出することとしている。実際、市場関係者にこの情報が流れると、11月14日の週の脱脂粉乳の市況は前週から4.6ユーロ(566円)安の同198.08ユーロ(2万4364円)となった。

今回の放出決定について、EU最大の農業生産者団体であるCopa Cogeca(欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会)は、脱脂粉乳の卸売価格は好転しているものの、他の乳製品に比べると低い水準にあり、かつ安定しているとは言い難く、さらに10〜12月は、欧州委員会による生乳出荷削減奨励事業が実施されており、9万8000戸の生産者が106万トンの生乳出荷削減に取り組んでいることから、時期尚早であるとして懸念を表明している。

放出は入札により実施され、11月25日に入札の受け付けが始まり、12月13日に締め切られて落札が決定される。その後は、応札の状況と市況をみながら放出は継続される見込みである。

(調査情報部 大内田 一弘)


				

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