需給動向 国内 |
平成28年10月の生乳生産量は、60万456トン(前年同月比0.5%減)と2カ月連続で前年同月を下回った(図7)。内訳を見ると、北海道は31万9396トン(同0.3%減)、都府県は28万1060トン(同0.7%減)と、ともに減少した。減産傾向が続く都府県の中で、最も生産割合が高い関東は、小幅ながらも5月以降は減少傾向で推移していたが、10月は増加に転じ前年同月比0.9%増となった。
用途別生乳処理量を仕向け先別に見ると、牛乳等向けは、好調に推移してきた牛乳消費を反映し、35万372トン(同1.9%増)と12カ月連続で前年同月を上回る一方、乳製品向けは、牛乳等向けの増加により24万5507トン(同3.7%減)と4カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。
10月のバター生産量は減少も、累計では前年同期を上回る
平成28年10月のバターの生産量は、生乳生産が減少する中で、牛乳等向けの増加により、4018トン(前年同月比8.7%減)とかなりの程度減少した。しかし、4〜10月までの累計で見ると、春先から夏にかけて生乳生産量の増加や脱脂濃縮乳の製造により生産される乳脂肪の増加により、増産傾向で推移していたことから、生産量は3万6732トン(前年同期比1.2%増)と前年同期を上回って推移している。
同月の脱脂粉乳の生産量は、7915トン(前年同月比6.2%減)とバターと同様に減少した。4〜10月の累計でも、脱脂濃縮乳向けの増加などから、6万8701トン(前年同期比2.1%減)と減少した。
バター在庫量、前年同月比20%以上と高い水準を維持
同月のバター在庫量は、国産および外国産バターの増加により、2万6244トン(前年同月比22.3%増)と大幅に増加した。また、機構調べの形態別バター需給表(国内乳業メーカー等13社)を見ると、バラバターに加え、ポンド・シート等バターの在庫量も前年同月を大幅に上回る水準となっている(表)。バター在庫増の要因の一つとして、価格の上昇により、大口需要者を中心に原料コストを低減するため、調製食用脂(PEF)(注)などへ原料の一部を置き換えてきたことで、需要の回復が遅れていることが考えられる。また、脱脂粉乳の在庫は、脱脂濃縮乳や調製粉乳需要の高まりなどにより、概ね増加傾向で推移しており、同月は4万8026トン(同3.3%増)とやや増加した。
(注) 調製食用脂(PEF)は、バターなどに植物油を混入したもので主にマーガリン、アイスクリームなどの原料として使用される。
4〜10月の調製食用脂の輸入、前年同期を上回る
バターの需給に関係する調製食用脂(PEF)の輸入量を見ると、平成28年10月は、1802トン(前年同月比24.4%増)と大幅に増加し、4〜10月累計では、1万2439トン(前年同期比7.7%増)となった(図8)。同期間の輸入量を地域別に見ると、関税割当数量が最も多いニュージーランド(NZ)が6200トン(全体に占める割合50%)、次いで、シンガポールが3944トン(同32%)、オランダが1659トン(同13%)となった。この増加は、平成26年度のバター不足によるバターの価格上昇により、大口需要者が原料の一部をバターから調製食用脂に置き換えたことによるとみられる。また、NZの関税割当数量は、依然として5000トン以上が未消化であり、国内で流通するバター価格や調製食用脂の輸入価格次第では、引き続き、輸入は増加傾向で推移するとみられる。
(畜産需給部 山神 尭基)