需給動向 国内 |
平成29年4月の牛肉需給を見ると、生産量は2万8315トン(前年同月比0.9%増)と2カ月連続で前年同月を上回った。品種別では、乳用種が7925トン(同4.4%減)と前年同月をやや下回ったものの、和牛は前年同月並みの1万2586トンとなり、交雑種は酪農家での黒毛和種交配率の上昇により7459トン(同8.2%増)と10カ月連続で前年同月を上回った。
輸入量は冷蔵品が2万2845トン(同9.7%増)と前年同月をかなりの程度上回った一方、冷凍品が2万8585トン(同8.6%減)と前年同月をかなりの程度下回ったことから、5万1485トン(同1.3%減)と5カ月ぶりに減少に転じた。
推定出回り量は、前年同月をわずかに下回る7万9612トン(同2.5%減)となり、推定期末在庫は前月から11トンを取り崩し、10万2782トン(同10.2%減)と16カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
平成29年4月の輸入量について、最大のシェアを占める豪州産は、出荷減や3月末のサイクロン上陸による一部パッカーの稼働遅れの影響などにより、冷蔵品1万467トン(同11.1%減)、冷凍品1万6979トン(同16.6%減)といずれも減少した(図1)。部位別に見ると、主にハンバーガーパティなどの加工用として使われることの多い「その他」が全体の42%(冷凍品の67%)、次いで、「かた、うで、もも」が32%を占めている。
29年4月の冷凍品の輸入単価を見ると、「かた、うで、もも」については、米国産の供給増を受けて軟調に推移しているものの、それ以外の部位は冷蔵品も含めて、前年を上回って推移しており、特に、豪州産への依存度が高い「その他」は同388円(同33.4%高)と前年同月を大幅に上回っている。
世界最大の牛肉輸出国であるインドが、国内全ての家畜市場において、と畜目的の牛および水牛の販売禁止を発表(5月25日)したことで、今後、豪州産への影響を注視する必要がある。
一方で、豪州産に次いで輸入量の多い米国産は、出荷頭数の回復に伴い、冷蔵品が1万1559トン(同38.5%増)と17カ月連続で前年同月比2桁増となり、冷凍品も9438トン(同11.6%増)と前年同月をかなり大きく上回った(図2)。部位別に見ると、主に牛丼や業務用として需要の多い「ばら」が全体の69%(冷蔵品の51%、冷凍品の90%)、次いで、「かた・うで・もも」が27%を占めている。
29年4月の輸入単価を見ると、出荷頭数の回復により、「かた、うで、もも」、「ロイン」などが低下する中、「ばら」については、冷蔵品が1キログラム当たり642円(同6.8%高)、冷凍品が同375円(同9.3%高)と前年同月を上回って推移している。
国内の輸入品仲間相場(部分肉卸売価格)を見ると、ショートプレート(冷凍品、「ばら」に相当)が同782円と前月から100円以上上昇しているほか、テーブルミートとしても業務用としても汎用性の高いチャックアイロール(冷蔵品、「かたロース」に相当)も同1200円前後と上昇基調で推移している(図3)。
卸売業者によると、米国内での牛肉需要が好調なほか、米中両国政府による中国の米国産牛肉の輸入再開合意を受けて、現地オファー価格が上昇しており、日本にとって米国産の買い付け環境が悪化している。高値疲れや米国産冷蔵品輸入量の増加などを背景に、国産枝肉相場が前年を下回って推移する中、現時点で増加が続いている米国産の今後の輸入動向が注目される。
(畜産需給部 二又 志保)