需給動向 海外 |
◆ブラジル◆
AI未発生国のブラジル産への引き合い強まる
ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2017年1〜3月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比2.8%増の96万9338トン(製品重量ベース)となった(表6)。輸出量が増加した主な要因としては、同時期の為替相場が前年同期よりも2割程度レアル高米ドル安で推移したにもかかわらず、米国やアジアで鳥インフルエンザ(AI)の発生が確認された中、AI未発生国であるブラジルへの国際的な引き合いが強まったことが挙げられる。また、輸出額(米ドル換算)は、レアル安の影響で輸出単価が米ドル換算で大幅に引き上げられたことから、前年同期比で24.0%増となった(図16)。
輸出先別の内訳をみると、最大の輸出先であるサウジアラビアは、同国内での鶏肉生産の拡大が進んでいるものの、需要も旺盛なことから、前年同期並を維持している。また、中国は、AIが発生した米国からの鶏肉および種鶏の輸入を停止していることから、ブラジル産の代替需要が引き続き強まっている。第3位の日本は、同国内で牛肉および豚肉が高値で推移する中、安価な輸入鶏肉の需要が高まったものの、主にレアル高基調で推移したことで取引がまとまりにくかったことなどから、前年同期比4.6%の減少となった。
3月17日、一部の食肉加工場が衛生基準を満たさない食肉や食肉加工品を国内外へ販売していた問題が発覚した。問題となった21カ所の食肉加工場は、衛生検査官に賄賂を払っていたとされ、警察の捜査対象となり、ブラジル政府は3月20日、これらの21工場に対し食肉の輸出禁止を命じた。
この問題により、主要輸入国がブラジル産食肉の輸入停止措置を講じたが、ほとんどの国が3月中に当該21工場以外の同措置を解除した。2017年4月の輸出量は、過去2番目を記録した前年同月を22.5%下回ったものの、現地報道では、AI未発生国である同国への引き合いは依然として強いことから、鶏肉輸出への影響については一時的なものとの楽観的な見方が多い。
主要輸出先のうち、中国向けは、2016年9月23日以降ブラジルの5つの処理・加工場の輸出認定が暫定的に取り消されたことなどを受けて大きく減少したが、同年12月16日に2工場が、2017年4月17日に残りの3工場が取り消しを解除されており、同国内の需要も旺盛なことから、輸出増が期待されている(図17)。
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が2017年4月に発表した「Livestock and Poultry:World Markets and Trade」は、ブラジルの2017年の鶏肉輸出量は前年比10.0%増の428万トン(可食処理ベース)と過去最高を見込んでいるが、今回の食肉不正問題の影響は考慮されていないと思われることから、その影響については注視する必要がある。
(調査情報部 佐藤 宏樹)