機構から 畜産の情報 2017年7月号

「国産農林水産物・食品への理解増進事業」の報告書について

調査情報部


 独立行政法人農畜産業振興機構では、農林水産省食料産業局から「平成27年度国産農林水産物・食品への理解増進事業」を受託し、平成28年1月から10月にかけて「生産者等が主体的に需要拡大に取り組む仕組みを検討するための調査」を行いました。

 このたび、この報告書が農林水産省から公表されましたので、その概要をお知らせします。

調査の概要

T 国内ヒアリング調査

今回、15調査先の販売促進活動の実態を調査した結果、販売促進活動の内容は、団体によって消費拡大イベントから食育、輸出など多岐にわたっているが、大半は国内向けの消費拡大を目的としていた。それは、いずれの団体・業界においても、海外に輸出できる量、輸出できる地域などに制限があることと、生産量に対する国内マーケットの消費量が圧倒的なウェイトを占めていることによる。

一部の県では、地域の農林水産物の輸出促進を目的とした協議会を県行政主導で設立し、県を含む会員団体から負担金を徴収し、さらに県の補助金を活用して財源を賄っている事例が見られた。

全国団体では、農畜産物の数量や価格に応じて徴収する方式で販売促進活動の財源を確保している団体がある一方、通常の会費を財源に団体の取り組みの一つとして販売促進活動をする団体があるなどさまざまであった。その中でも中央酪農会議は、生乳取引の仕組みを活用して販売促進目的の賦課金を徴収する仕組みとし、かつ、生乳取引量に応じて大部分の酪農家から徴収できているのが特徴的であった。

地方団体では、農畜産物の数量に応じた生産者負担金や食肉業界からの会費のほか、補助金を財源として販売促進活動を行っていた。

地方行政機関は、行政機関としては補助金の交付をする立場から販売促進活動に関わる例がある一方で、協議会などを主導的に立ち上げて事務局として生産者や業界を取りまとめている例も見られた。

U 国内PRイベント調査

 1 本調査に適する出展者は、全国5カ所の国産品PRイベントに参加しており、そのうち8団体を対象にアンケートを実施した。8団体中6団体が生産から販売まで行っていた。

 2 8団体は、いずれも県など外部から案内のあったイベントに、取り扱う商品の認知度向上または販売促進のために出展していた。出展に要した経費は、試食の量やイベントの開催期間などによりさまざまであった。

 3 イベントにおけるPR方法は、パンフレットの配布、試食提供またはその両方のいずれかであった。PR方法ごとの満足度合については、全ての団体がおおむね満足と回答したものの、その結果は客数に影響を受けることがわかった。また、全ての団体が、40〜50代の女性が出展商品に関心が高かったとしている。

 4 販売促進活動の課題としては、効果的なPR方法がわからない、販売促進活動を実施するための十分な人員が確保できない、イベント出展により赤字になる場合があるなどさまざまな意見が挙げられた。

V チェックオフ海外調査

各国で実施されているチェックオフ制度は、いずれも業界の自主的な取り組みである研究開発や消費者への理解醸成、消費促進などを行うため、任意拠出として始まった品目が多い。その実施過程の中で、任意拠出を行わず利益だけを享受する者(フリーライダー)の発生を防止するため、業界自らが生産者の合意形成を行い、強制徴収の仕組みを連邦政府や議会に要請したものである。

このため、連邦政府(行政)は基本的に業界の自主的な取り組みであるとの認識であり、業界による合意形成およびその内容を前提として、制度化に取り組んでいる。これについては、徴収の仕組みなどが多少異なるものの、米国や豪州では同様の考えである。制度はあくまでも業界の自主性に重点が置かれており、具体の事業、徴収者の範囲、意思決定のための生産者ごとの投票配分などは業界が決定する。

チェックオフ資金の徴収、管理業務は、透明性や公平性を確保する観点から、米国では法律に基づき認可された第三者組織が、豪州では連邦政府が直接、カナダでは法律に基づき設立された公的機関(エージェンシー)が携わっている。また、生産者から徴収する課徴金を納付する者は、生産者から対象となる品目の購入者(業者)となり、納付しない場合の罰則は購入者に課せられる。これらの円滑な徴収を行うため、行政は家畜市場などの取引現場の監督を重視している。

なお、豪州 や韓国では、輸入業者(輸入品)からの課徴金徴収を行っていないが、米国では、チェックオフ制度導入時は生産者からのみ徴収していた品目の中で、乳製品のように、その後、輸入業者からも徴収するよう制度を改正したものが存在する。また、カナダでも、肉牛を対象としたチェックオフ制度の開始後、全ての州で施行となった段階で輸入業者からも徴収を開始している。

チェックオフ資金の具体的な使途は、法律に規定された範囲内で資金管理団体などが生産者の意向を踏まえて決定する(米国は資金管理団体の「ボード」、豪州は課徴金制度の申請を行った業界団体、カナダはエージェンシーの「ボード」、韓国は生産者団体)。

チェッククオフ制度に対する政府の役割としては、米国では法に基づく管理・監督が主なものとなる。豪州ではこれに加え、前述の課徴金の徴収、管理業務と、研究開発公社が課徴金を原資に行う調査・研究事業への補助を実施している(豪州の課徴金制度は、研究開発を目的として導入された経緯があり、そのインセンティブとして連邦政府の予算の範囲内で調査・研究開発事業についてのみ、課徴金相当額と同額を補助)。カナダでは、農産品協議会が、法に基づいて設立され供給管理品目(生乳、鶏肉)を管理する団体を含む将来設立される連邦チェックオフに関するエージェンシーを管理・監督し、政府は協議会の報告を受ける立場であるほか、エージェンシーの設立の可否を判断する立場にある。韓国では、法に基づく管理・監督に加え、チェックオフ団体に対する事業実績評価を実施し、これに基づきチェックオフ制度の活性化のために団体別に一定額の国庫支援を行っている。なお、米国および豪州では、チェックオフ制度の運営に要する連邦政府の経費(人件費や固定経費など)は、その割合に応じて各品目のチェックオフ資金から充当されるが、カナダと韓国では、管理・監督に係る経費は政府が負担する。

一般的なチェックオフ制度に対する生産者の見方として、米国の生産者は、個々の経営に対して政府(行政)の関与を嫌う傾向があり、業界が主体的に実施できるチェックオフ制度を志向している。カナダの肉牛生産者も米国と同様、政府の関与を嫌う傾向はあるものの、生産者がチェックオフ資金を拠出して行う各事業のうち、政府の方針と合致するものについては、研究事業を中心に政府が個別の事業費の50〜75%を補助するなど、政府との協調の手段としてもチェックオフ制度を志向しているが、チェックオフ資金そのものへの政府資金の投入は行われていない。韓国では、チェックオフ制度が農政の一部を担う形とされており、政府による誘因手段として一定割合の補助が行われており、実施品目が拡大している。一方、豪州では、連邦政府は基本的にインフラや災害対策など限られた施策のみの実施であり、ほかの施策を選択できる可能性が小さいことから、これを補うものとして課徴金制度を支持する傾向が高い。

現在、チェックオフ制度の対象品目は国によって異なるものの、農畜産物を中心に芝生やクリスマスツリー、ポップコーンなど、その対象・範囲が拡大している。

 なお、報告書の詳細は、農林水産省のホームページhttp://www.maff.go.jp/j/shokusan/gizyutu/tisan_tisyo/index.htmlをご覧ください。


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