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生乳出荷量が回復の兆し、バターは依然として高値
欧州委員会によると、2017年3月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月より3010トン多い1347万9870トン(前年同月比0.02%増)となった(図21)。わずかな増加ではあるが、生乳出荷量は、生乳取引価格の低迷などにより長らく減少傾向にあり、前年同月を上回ったのは10カ月ぶりとなる。
加盟国別に見ると、EU最大の生乳出荷国であるドイツ、第2位のフランス、第3位の英国が減産となり、第4位から第8位までのオランダ、ポーランド、イタリア、スペイン、アイルランドが増産した(表8)。
欧州委員会は、3月の短期需給見通しの中で、減少傾向にあった生乳出荷量について、生乳出荷のピーク期となる4〜5月には前年並みまで回復し、2017年通年では前年比0.6%増となるとしていたが、3月の結果を受けて、4〜5月のさらなる増産を予測する見方もある。
2017年1〜3月までの累計は、1月と2月の減少の影響により、EU全体では前年同期比2.1%減となっている。
欧州委員会によると、2017年4月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、100キログラム当たり33.00ユーロ(1キログラム当たり41.91円:1ユーロ=127円)と前月から0.11ユーロ(同0.14円)下落した(図22)。
同価格は、前年同月比20.6%高と6カ月連続で前年を上回ったものの、前年8月から12月にかけての上昇の勢いはなく、2017年に入ってからはほぼ横ばいで推移している。生乳出荷量に回復がみられる中、緊急支援策として介入買入れされた脱脂粉乳35万トンの公的在庫などが、価格の上昇に歯止めを掛けているとみられている。
欧州委員会によると、2017年5月15日の週のバター平均卸売価格(EU28カ国)は、前年同期比82.4%高の100キログラム当たり471.3ユーロ(5万9855円)となった(図23)。
現地報道によると、EU域内外でバター需要が高まる中、長らく続いた生乳出荷量の減少の影響により、バター生産量が主要生産国を中心に前年を下回っており、供給不足の状況にある。欧州委員会によると、EU全体の2017年1〜3月のバター生産量は、前年同期比4.0%減の55万4300トンとなっている(表9)。
今後、バター生産は、生乳出荷量の回復と高値で推移する同価格の影響により増えるという見方もあるが、EU域内外のバター需要は高く、しばらくは現在の高値が続くとみられる。
(調査情報部 大内田 一弘)