需給動向 海外

◆米 国◆

チーズ、脱脂粉乳の輸出量は前年同月比大幅増


2018年の生乳生産量は1億トンを超える見込み

米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が5月19日に公表した「Milk Production」によると、2017年4月の経産牛飼養頭数は939万頭(前年同月比0.7%増)となった。1頭当たり泌乳量も884キログラム(同1.2%増)と前年をわずかに上回ったことから、同月の生乳生産量は前年同月比2.0%増の830万2965トンとなった(図18)。

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なお、USDAは、2017年の生乳生産量を9838万4000トン(前年比2.1%増)と見込んでおり、今後も堅調な生産が継続すると予測している。また、2018年については1億69万7000トン(同2.4%増)と、乳価の上昇と安値で推移する飼料価格を背景に、統計開始以来、初めて1億トンを超えると見込んでいる。

豪州向けチーズ輸出量が増加

乳製品輸出は、低調に推移する価格を背景に、オセアニア産および欧州産と比べ競争力を有していることから、前年を上回る水準で推移している。USDAによると、2017年4月の脱脂粉乳輸出量は5万5555トン(前年同月比20.2%増)となり、2016年7月以降10カ月連続で前年同月を上回った(図19)。最大輸出先であるメキシコ向けが2万4127トン(同14.4%増)となったほか、中国向けは前年同月比約2.5倍の4029トン、ペルー向けは同15倍の2011トンと大幅に増加した。

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また、同月のチーズ輸出量は2万6877トン(同26.9%増)と、2016年10月以降7カ月連続で前年同月を上回った(表7)。国別に見るとカナダを除く主要輸出先国の多くで増加し、なかでも豪州向けの増加幅が顕著であった。米国乳製品輸出協会(USDEC)は、この傾向が続けば、同国は近々日本を抜き、米国にとって第3のチーズ輸出市場になると見込んでいる。

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米加間の乳製品貿易をめぐる情勢

米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が5月16日に公表した「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」では、最近、米加間で問題視されている限外ろ過(UF-85)牛乳(注)などの貿易に関する分析が掲載された。これによると、米国産乳製品輸出は総じて改善しつつある一方、乳タンパク質を85%以上含むUF-85牛乳や乳たんぱく分離物(MPI)のカナダ向け輸出は不振に陥っているという。

多くの乳製品と異なり、カナダによる米国産UF-85牛乳およびMPIの輸入は、北米自由貿易協定(NAFTA)により無税とされる。このため、カナダの米国産UF-85牛乳およびMPIの輸入金額は増加傾向で推移し、2014年には1億231万米ドルに達したものの、2016年には9695万米ドルに減少した(図20)。

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USDAはこの要因として、2016年以降、カナダで導入が始まっている新たな乳価に言及している。UF-85牛乳を対象とする新乳価によって、同国では国産加工原料乳の価格が安価になるため、同国でチーズなどを製造する企業にとって、米国産の優位性が減退しており、米国ではUF-85牛乳を製造していた乳業会社による生乳買入れ契約打ち切りの動きも出ている。

(注) 生乳にろ過膜を透過させて乳タンパク質を濃縮したもの。主にチーズの原料となる。

(調査情報部 野田 圭介)


				

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