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2017年牛肉生産量見通し、枝肉重量の増加により上方修正
豪州統計局(ABS)によると、2017年2月の成牛と畜頭数は、牛飼養頭数の減少により、56万9100頭(前年同月比12.3%減)と引き続き減少した。このうち、雌牛のと畜頭数は、東部の主要肉用牛生産地域において1、2月が乾燥気候にあったことなどもあり、クイーンズランド州でかなり増加したことから、前年同月比9.8%減の26万2100頭となった。その結果、牛群再構築のための雌牛の保留傾向を示す一つの指標とされている、と畜頭数に占める雌牛の割合は前月からかなり増加し、4カ月ぶりに前年同月を上回る46.1%となった(図7)。
しかし、牛群再構築のための雌牛の保留傾向については、3月末に発生したサイクロンによりクイーンズランド州の一部では洪水などの被害が出ているものの、サイクロンによりもたらされた雨が全般的には牧草の生育に良い結果をもたらしているため、今後も雌牛のと畜割合は前年を下回って推移すると見込まれる。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、年明け以降下落傾向で推移してきたが、3月中旬に上昇に転じ、4月10日時点で1キログラム当たり668豪セント(568円:1豪ドル=85円)まで上昇した(図8)。その後はわずかに下落するも、4月28日時点で同659豪セント(560円)と前月末時点より上昇した。これは、前述のサイクロンによる洪水などにより、クイーンズランド州の一部で牛の輸送が滞って取引頭数が減少した一方で、全体的には良好な降雨を受けて牧草肥育業者を中心に導入意欲が高まっていることが要因とみられる。
豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2017年3月の牛肉輸出量は、生産量の減少に伴い9万734トン(前年同月比6.2%減)と減少し、1〜3月の合計でも21万6361トン(前年同期比12.0%減)とかなり減少した(表2)。
1〜3月の輸出量を主な輸出先国別に見ると、日本向けは、6万5379トン(同22.3%増)と、他の多くの輸出先国向けが減少して推移する中で、唯一大幅に増加している。日本では、和牛や国産牛価格の高値が続く中で、輸入品への需要が高まり、2016年12月から2017年3月の牛肉輸入量は、前年同月を大幅に上回って推移している。
一方、韓国向けは、3万2675トン(同20.5%減)と大幅に減少した。2016年は同国の牛肉生産量の減少と牛肉価格の上昇により輸入牛肉需要が増加し、豪州からの輸入が韓豪FTAのセーフガードの発動基準を上回ったものの、2017年は、一部の大手量販店が米国産への切り替えを行うなど、米国産へのシフトが影響しているものと思われる。
MLAは2017年4月18日、「Industry projections 2017 April update」を公表し、2021年までの牛肉需給見通しの見直しを行った(表3)。
前回から大きな変更はないものの、と畜頭数に占める雌牛の割合の減少や穀物肥育牛の割合の増加により、1頭当たりの枝肉重量が増加するとし、2017年の牛肉生産量見通しが145万8000トン(前年比2.2%増)とわずかに上方修正された。また、輸出量も、生産量の増加に伴い上方修正された。
また、MLAは、現在高水準で推移している肉牛取引価格について、年明け以降の良好な降雨もあり、2017年中は引き続き高水準を維持して推移するものの、豪州を含む世界的な供給の増加により、2018年以降に下落するとしている。
(調査情報部 大塚 健太郎)