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生乳生産、減少続く
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2017年3月の生乳生産量は、62万7900キロリットル(64万6700トン相当、前年同月比5.1%減)と、前年同月をやや下回った(図21)。
前年同月比での減少幅はこれまでよりも縮小したが、大手酪農協のマレーゴールバン(MG)社や豪州フォンテラ社が、前年度終盤に生産者乳価を大幅に引き下げてから1年が経過する中、酪農家の経営状況は、今なお苦境が続いているとされており、主産地であるビクトリア州北部では同13.7%減と、依然として前年同月をかなり大きく下回る生産となっている。MG社の同地域における2016/17年度の集乳量は、前年度比で3割以上減少するとみられており、こうしたことを受け、同社は5月2日、国内に10ある乳業工場のうち3つを、2018年末までに閉鎖すると発表し、現地では動揺が広がっている。
なお、DAは、3月末に発生したサイクロンにより、集乳の遅延などの被害を受けた地域について、まとまった降雨が得られたことから、総じて牧草の生育状況の改善がみられたとしている。
DAが発表した、2017年2月の乳製品の主要4品目の輸出量は、以下の通りとなった(表7、図22)。
主要4品目のうち、全粉乳は、中国向け輸入需要の高まりに加え、前年同月の大幅減の影響もあり、大幅に増加した。
一方、脱脂粉乳は、中国向けが2割近く増加した一方で、インドネシアをはじめとした東南アジア各国向けが、輸入需要の伸び悩みを受け4割以上減少したことで、前年同月を大幅に下回った。バターも、東南アジア各国向けが大幅に減少したことから、前年同月を大幅に下回った。
チーズは、主要な輸出先である日本向けが、ニュージーランド(NZ)産からの切り替えなどにより増加したものの、米国向けが需要の減少に伴い減少したことから、前年同月をわずかに下回った。
2017年4月18日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通り、脱脂粉乳を中心に、主要4品目はいずれも前回から上昇した(表8、図23)。
現地専門家によると、NZや豪州といった生乳主産地が減産を続ける中、輸入乳製品の在庫減少に伴い中国の輸入需要が回復していることが、国際価格上昇の背景にあるとしている。特に、脱脂粉乳の価格上昇は、介入在庫から放出されたEU産よりも、製造時期が新しいNZ産や豪州産に対する需要が相対的に高まったためとしている。ただし、5月にかけて北半球での生乳生産がピークを迎えると、こうした市況は変化する可能性もあるとしている。
豪州の乳業メーカーであるBurra(バラ)社は4月18日、2016/17年度の生産者支払乳価を、年度当初設定額である乳固形分1キログラム当たり4.40〜4.60豪ドル(374円〜391円:1豪ドル=85円)から、同4.80〜5.05豪ドル(408円〜434円)に引き上げると発表した。乳製品国際市況の回復と、米ドル高・豪ドル安で推移する為替相場を受けたものとみられる。現地報道によると、大手乳業メーカーの低い乳価に不満を持つ酪農家が、生乳供給先を同社に切り替える可能性があるとしている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)