需給動向 海外

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減産傾向も乳価は横ばいで推移


生乳出荷量は9カ月連続前年割れ

欧州委員会によると、2017年2月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.1%減(うるう年調整後。以下同じ)の1172万トンと9カ月連続の減少となった(図19)。

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加盟国別では、EU最大の生乳出荷国であるドイツ(シェア21%)が同3.7%減、第2位のフランス(同17%)が同3.0%減となるなど、直前の1月まで実施されていた生乳出荷削減奨励事業の影響などにより、主要国を中心に減少している。

欧州委員会は、生乳出荷のピークを迎える4〜5月の生乳出荷量は、前年並みまで回復すると予測している。また、乳価が現行水準で推移する場合、リン酸塩の削減を図る政策の実施により頭数が削減される見込みのオランダを除き、下半期は増産に転じると見込んでいる。

生乳出荷削減奨励事業の最終結果

欧州委員会は4月6日、生乳出荷削減奨励事業の2回目の対象期間(2016年11月〜2017年1月)における事業実績と、1回目(2016年10月〜12月)と合わせた最終結果を公表した。

同事業は、供給過多にある生乳の需給を引き締め、低迷する生乳取引価格の回復を図るため、前年同期で減産した生乳に対し1キログラム当たり14セント(17.1円:1ユーロ=122円)の奨励金を交付するものである。ギリシャを除く27カ国が同事業を実施し、交付実績は、計画(107万1429トン)の80.35%に当たる86万907トン(1回目85万1700トン、2回目9207トン)となった。この量は2016年の平均月間生産量の7%程度に相当する。

加盟国別では、ドイツが23万5110万トンの削減(実施率81.6%)、フランスが15万2776トンの削減(同82.9%)と、両国で全削減量の45%を占めた。また、18カ国が独自予算で奨励金単価の加算を実施した。

乳価は5カ月連続前年超え

欧州委員会によると、2017年3月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比16.8%高の100キログラム当たり33.11ユーロ(1キログラム当たり40.39円)と5カ月連続で前年を上回った(図20)。

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同価格は、生乳出荷量が減少傾向で推移する中、EU域内外からのバターおよびチーズ需要の高まりなどの影響を受けて前年8月以降上昇傾向にあった。欧州委員会は、昨年7月の底値(同25.67ユーロ(同31.32円))から3割以上の上昇を生乳出荷削減奨励事業の奏功によるものとしたが、脱脂粉乳の卸売価格が低迷する中、緊急支援策として介入買入れされた35万トンの公的在庫が重しになっており、2017年に入ってからはほぼ横ばいで推移している。

(調査情報部 大内田 一弘)


				

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