需給動向 海外 |
牛肉生産量、飼養頭数増加で2017年後半から回復の見込み
11月の牛肉生産量、引き続き前年同月比減も減少幅は縮小
豪州統計局(ABS)によると、2016年11月の成牛と畜頭数は、66万9100頭(前年同月比6.1%減)と減少したものの、2015年10月以降の2ケタ台の減少に比べると、減少幅はかなり小さくなった。同月の牛肉生産量(子牛肉を除く。)も、19万6887トン(同3.6%減)と17カ月連続で前年同月を下回ったものの、1頭当たり枝肉重量が増加した影響もあり、前月(同21.4%減)に比べて減少幅はかなり小さくなった(図4)。
生産量を州別に見ると、最大の生産州であるクイーンズランド州が前年同月比3.2%増と15カ月ぶりに前年同月を上回り、その他の州についても前年同月比からの減少幅が前月と比べて縮小した。
肉牛取引価格、取引頭数の増加に伴い下落傾向
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2017年1月末時点で1キログラム当たり655豪セント(576円:1豪ドル=88円)となった(図5)。同価格は、2016年10月後半から年末にかけて取引頭数の増加に伴い下落傾向で推移したものの、1月は取引頭数が年末の水準に比べて減少した一方、肥育業者の需要は堅調であったことから、わずかに上昇したとみられる。
2016年牛肉輸出量、大幅に減少
豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2016年の牛肉輸出量は101万4054トン(前年比21.1%減)と、牛飼養頭数の減少や牛群再構築のための雌牛保留による牛肉生産量の減少により大幅に減少した(図6)。
米国向けは、米国内における牛肉生産量の増加と豪州における牛肉生産量の減少により、24万942トン(同42.1%減)と大幅に減少した。
日本向けは、26万3458トン(同7.6%減)とかなりの程度減少したものの、米国向けの大幅な減少により最大の輸出先となった。
韓国向けは、同国における韓牛の生産量の減少と牛肉価格の上昇に伴い輸入牛肉への需要が増加したことから、17万9375トン(同7.7%)とかなりの程度増加した。
東南アジア向けは、大部分を占めるインドネシア向けが前年比1.5倍となったことから、11万3327トン(同23.9%増)と大幅に増加した。インドネシアでは、需給のひっ迫で高騰する牛肉価格を引き下げる目的で、政府が牛肉の輸入枠を増加させたことから、豪州からの輸出が大幅に増加した。
牛肉生産量、2017年後半には回復の見込み
MLAは2017年1月23日、「Industry projections 2017」の中で、2021年までの牛肉需給見通しを発表した(表2)。
2017年(6月末時点)の牛飼養頭数については、ビクトリア州やニューサウスウェールズ州などの南部を中心に牛群の回復が進んでいることから、268万1000頭(前年比2.6%増)と4年ぶりの増加を見込んでいる。
一方、2017年の牛と畜頭数、牛肉生産量および輸出量については、年後半以降の回復を見込んでいるものの、前年をわずかに下回ると予測している。
また、生体牛輸出については、輸出向けの頭数が不足することに加え、最大のインドネシア向けが、同政府による肉用牛5頭につき繁殖牛1頭の輸入を義務付ける新たな規則の導入や、インドからの水牛肉輸入の増加などにより、大幅に減少すると見込んでいる。
2018年は、牛飼養頭数の増加に伴い、牛と畜頭数、牛肉生産量と輸出量について増加する見込みとしており、2019年以降は、生体牛輸出も含め全体的に増加傾向で推移する見込みとしている。
(調査情報部 大塚 健太郎)