需給動向 海外 |
多様化し始めた乳製品需要
2017年の生乳生産量と乳牛飼養頭数は減少の見込み
USDAが2016年12月に公表した国際乳製品需給観測によると、2017年の中国の生乳生産量は前年比2%減の3500万トンと見込まれている(表11)。また、乳牛飼養頭数は同6.3%減の750万頭とされており、近年は1000万頭以上の水準を維持しているとする中国政府の公表とは相違があるものの、生産者乳価の低迷と、酪農経営のコストが諸外国に比べて高い体質であることにより、前年に引き続き生乳生産量と飼養頭数が一定程度減少するという大きな方向性については、現地業界関係者の間でも共通した認識となっている。
一方、多くを国際市場からの調達に頼っている粉乳類の動向に関し、全粉乳については、国内生産量は前年に比べ1.8%増加し、輸入量は14%増加するとし、脱脂粉乳の輸入量は現状維持を見込んでいる。
春節に向けた国内生乳価格は上昇
農業部の公表する主要生産省・自治区の1月第2週までの生乳の平均農場出荷価格は、1キログラム当たり3.54元(60円:1元=17円)と2014年のピーク時の4.27元(73円)に比べると引き続き低い水準ではあるものの、例年春節で乳製品の需要も高まることから、その前後で生乳価格も上昇することも多く、本年もほぼ前年同期と同水準に回復している(図26)。
2016年の乳製品輸入はヨーグルト、チーズなどで伸長
2016年の乳製品輸入量は、脱脂粉乳で前年を下回ったものの、その他の品目では増加した。特に増加が著しいのはヨーグルトで、前年比123%増の1万5195トンとなった。7割を占めるドイツ産の伸びが全体の増加をけん引しており、前年比356%増の1万516トンとなった(図27)。
ドイツはロシアへの乳製品輸出が停止していることで、代替輸出先として中国にも注目しており、飲用乳やヨーグルトの輸出拡大に力を入れている。
一方、チーズの輸入も毎年堅調に伸びており、2016年は前年比29%増の10万トン弱と、日本の25万トン(2015年)に比べてもまだ少ないものの、その増加は著しい。ただし、その調達先は、オセアニアと米国で全体の82%と大部分を占めており、現時点では単価の安い原料用チーズに対する需要が大きいことがうかがえる(図28)。
種類別の動向を見ると、年によって構成割合は変化しているが、比較的フレッシュチーズの輸入量が多く、直接消費用のほか、ピザなど外食産業用の需要も一定程度あることがうかがえる(図29)。
また、中国の国内チーズ生産は極めて少なく、かつて国内大手乳業数社が生産を試みたものの、今のところ大規模生産には至っていない。従って、現地小売店では国産(外資系含む)ブランドの販売は限定的であるが、量販店などでは、国産のプロセスチーズや、生菓子タイプのチーズフードのような製品を多く見かける。これらの原料用としては、図29の「その他チーズ」のカテゴリで輸入されるナチュラルチーズなどが一定量使われていると推察される。
(調査情報部 木田 秀一郎)